劇場公開日 1969年10月1日

「不死身の富士松、死亡…?」緋牡丹博徒 鉄火場列伝 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5不死身の富士松、死亡…?

2023年5月26日
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矢野竜子の子分の中でもとりわけ忠実で気風がいい不死身の富士松を演じていた待田京介だが、本作ではなんと全く別の役で登場する。そもそもシリーズを通じて高倉健と鶴田浩二が全く別の役として交互に客演しているのだからこういうスターシステム的な配役は不思議でもなんでもないのだが、富士松に関しては熊虎の親分と同様に連続性のあるレギュラーキャラクターなのだから突然その存在を消去されるというのはやはり切ない。それに藤純子が待田京介に敬語を使ってペコペコ頭を下げている状況というのもなんだかおかしい。

物語は貧農vsヤクザの図式に矢野竜子とその一派が貧農側として介入するといういかにも60年代任侠映画の作風であり、ショットや演出にもこれといった見どころはない(無人の砂丘を歩く藤純子を望遠するラストカットはよかった)。ただ客演の鶴田浩二が意外にもあっさり事切れるところや、熊虎が一度は盃を交わした兄弟分を挨拶もなく斬りつけるあたりに70年代から本格化する東映の実録路線のリアリズムがほのかに香っている…のかも?

ちなみに子連れの鶴田浩二と藤純子という取り合わせは『女渡世人』にも受け継がれている。藤純子の子供に対する慈愛と怨敵に対する殺意のギャップを顕現させるものとして渡世人仲間の幼子を預かるという筋立ては好材料なのだろう。思えば緋牡丹博徒シリーズ第3作『花札勝負』でも彼女は女博徒の娘の面倒を見ていた。

因果
タンバラライさんのコメント
2024年2月21日

初めまして・・じゃないかもしれませんが・・ この映画 私はとても面白かったです。 このシリーズで 他にも面白いのがあったら是非 知りたいのですが、教えていただけませんでしょうか?

タンバラライ