劇場公開日 1969年8月9日

人斬りのレビュー・感想・評価

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4.5三島由紀夫がすごい

2021年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

勝新太郎、仲代達矢、三島由紀夫、石原裕次郎の共演で幕末の暗殺者、岡田以蔵を描く作品だ。とにかく血なまぐさい殺陣すごい。テレビ出身の五社監督だからこそできる、それまでの様式的な殺陣とは異なる、本物の殺し合いの凄みに迫ろうと試みた野心的な作品だろう。序盤の吉田東洋の暗殺の場面は鮮烈な印象を残す。岡田以蔵がそれを見て感化されるのも納得の凄惨で人間の生き死にの瞬間の、鮮烈さが描かれている。
勝新太郎演じる岡田以蔵のチャーミングさとやんちゃさを併せ持ったキャラクターも憎めない感じが出ていて良い。大きな人斬り仕事に置き去りにされた以蔵が、ふんどし一丁で駆け出すシーンは大変に印象的だ。
そして、なんと言っても薩摩の田中新兵衛を演じた三島由紀夫の切腹シーンがすごい。実際に三島が切腹自殺をする1年前の作品だが、この頃の三島の佇まいは強烈な殺気と色気があり、いるだけで画面が引き締まる。

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杉本穂高

3.5三島由紀夫出演。

2024年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ヤクザ映画で見たことはあるが、三島由紀夫が時代劇出演の経験があったとは知らなかった。それだけでも観た甲斐があった。彼が実際に切腹自殺する前の年に映画で切腹するシーンを演じていたとは。ボディビルの効果か、実に見事な筋肉だった。勝新太郎の殺陣は雑に見える。少々長過ぎるのも玉に瑕。

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Yohi

4.0しっかり堪能するには最低限の歴史的知識は必要

2022年9月16日
PCから投稿

そうすると一部のキャラに非常に違和感を感じるが、そこは映画。すぐに慣れてしまう。
仲代達矢が醸し出す緊張感と勝新太郎が醸し出すユーモア感と言うか、大衆娯楽感と言うか・・そういうものがバッチリ噛み合ってとても面白かった。主人公のキャラクターがとてもよく分かり、そのキャラクターゆえに陥る苦しみ悲しみというものがよく伝わってきた。こんなキャラクターをしっかり描ききった橋本忍はやっぱりすごい脚本家だ。またこの映画には橋本脚本には珍しく、主人公が女と絡むシーンがある。そこのところがあることによって主人公のキャラが非常によく伝わってくる。それと女の態度やセリフが結構ジーンと来るものがあってよかった。
難点を言うとちょっと長すぎるところかな。あと締めくくりもしっかり昇華しきったという感じがせずに少し引き締まりがこないまま終わったという感覚があった。これはストーリーの性質上致し方なかろう。何しろ橋本忍が書いてもこのようにしか書けなかったんだから。
カメラや演出もとても良かった。街並みの美しさもあったし女郎屋での人物の絵もとても美しかった。もしかしたらリマスター版で色を加工していたのかもしれないがまぁ不自然さがなくて綺麗だった。やっぱりはフィルムは美しい。演出で冴えていると思ったところは走るところだな。・・あの部分は脚本上でも非常に重要な部分で・・それをあのような音楽をつけてあのようなカメラワークで撮影してああいう映画にしたら・・監督冥利に尽きるな。それと三島由紀夫の・・これはネタバレになるのでここには書けない。三島由紀夫の演技全体は良いのか悪いのか非常に微妙だが、あのシーンだけは・・・!
あと超人気のあった石原裕次郎も魅力的だった。今の若い女の子がこん時の裕次郎を見てどんな風に思うかちょっと聞いてみたいもんだな。
とにかくこれはこんだけ長いのにあきっぽい私が一回も休憩せずに一気に見たのだから中々の映画なのは間違いない。五社英雄作品ならまずこれをお勧めする。

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タンバラライ

3.5岡田以蔵

2021年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

土佐の乱暴者、岡田以蔵(勝新太郎)を刺客に仕込んだのは、土佐勤王党の武市半平太(仲代達矢)だった。
京に出て、以蔵は半平太に命じられるままに暗殺を繰り返し、人斬り以蔵と恐れられた。
幼馴染の坂本龍馬(石原裕次郎)からは、もう止めろ、と諭されるが、盲目的に服従している以蔵は・・・。
監督は五社英雄、重厚なチャンバラ映画で面白いが、終盤は以蔵が可哀相になってくる。

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いやよセブン

4.0権力に使い捨てられた不器用な男の哀れな悲しみを描いた良作

2021年7月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

ソフト化されていない本作がアマプラで観られるとの情報に、急ぎ鑑賞。

いやぁ、武市半平太が悪(ワル)だわぁ。
以蔵を主役、武市を悪役に据えた脚本だから致し方無いけれども、後の歴史人物イメージに与えた影響は多大過ぎるんじゃないかな?
武市は潔癖で高潔だと思うので、非情なエゴイストとして描かれた下記のシーンは残念に思う。

原作では、牢にて以蔵の事を「知らぬ。以蔵ではない。」と否定したのは、武市ではなく山内容堂の再組織させた藩内閣の警吏だ。
この時、すでに武市一派は捕らえられ、凄まじい拷問に耐え続ける日々を送っている。
しかし、1人でも多くの同志を活かす為、誰も口を割らない。

容堂は武市一派を抹殺すべく、以蔵を手に入れたのだ。
しかし、以蔵には武市も藩も区別はつかない。武市達同様の恐ろしい拷問が加えられたが以蔵は藩憎しで吐かない。その代わりに凄まじい大声で情けなく泣き叫ぶ。
武市が毒を差し入れたのは、むしろ温情だったのだが、以蔵に理解出来る筈もない。
「飼い犬を利用し、支配しようと続ける主人に対する憎悪」が以蔵を貫いたのだろう。以蔵がすべてを暴露したのは映画の通りだ。

もっとも、史実では牢では「ただの脱藩者」として処理され、土佐に戻ってからは女子供でも耐える程度の拷問で口を割ったらしい。
以蔵の自白により真っ先に犠牲になったのは武市の身内。にも関わらず、以蔵毒殺を提案する仲間達を止めたのは武市であった。

ま、武市の弁護はこの辺にして、勝新の創り出した以蔵には非常に納得であった。
実在の以蔵の写真などから痩躯の印象が強かったが、司馬遼の文章にはこうもある。
「学問が無く、学塾に行くほどの頭脳もなかった」
「血に飢えた狼が噛み付くような下品(げぼん)な身動き」
「掛け声も品がない。獣が咆えているよう」
「髪の生え際が不揃いで、毛がちぢれており、目がくぼみ、眼裂が赤くただれている。やや猫背」
「無教養で言葉の使い方を知らない」
「泣きっぽく、不甲斐なく顔をくしゃくしゃにして泣き喚く」
「以蔵にとっては、武市も龍馬もどちらも「偉い人」だから、理に誤りがあるはずはない、と考えている。攘夷・開国の違いもわからぬ」

なるほど!勝新、ある意味、雰囲気ぴったりではないか!(笑)
外見の印象よりも、重要なのは中身。
野生的で涙脆くて人情家かつ愚鈍な以蔵であれば良いのだ。斯して、勝新オリジナル解釈の岡田以蔵が誕生したわけだが、実に人間味があって良いと思う。

裕次郎。まぁ、脚本でもう少し上手く龍馬を使えた気もするが、勝が食われても困るからあの程度でよいのかな。
そして三島!
私が物心ついた時には、すでに市ヶ谷事件後であった為、銀幕の中とは言え、そこに三島由紀夫が存在している姿は感慨深い。
カメラに見事な上腕二頭筋が映し出されるが、幼少期から虚弱体質だった三島がいつ肉体改造したのかな?と、思わず調べてしまった。30歳頃、「金閣」寺執筆の頃かららしい。

大手映画会社達の五社協定が崩壊し、映画スター達の独立プロダクション設立が相次いだ時期、勝プロ立ち上げて間もない頃に放たれた、渾身の作品の一つに間違いない。

権力闘争の中で使い捨てられた、暗殺しかできない男の、きわめて荒削りでむき出しな、おろかであればあるほど哀切深い悲しさが描かれている。
それはまた、長年尽くしてきた大映に対する勝新の心情。
豪快な一匹狼を装いながらも、組織と完全に切れる事は出来ない情けなさや惨めさを「以蔵」というキャラクターに投影した勝自身の物語でもあったのだ。

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pipi

5.0えげつない傑作

2020年11月23日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

萌える

長年ずっと観たかった本作。たまたま当日になって新文芸坐のサイトを見てリバイバルを知り、やっと観ることができた。
未ソフト化なので期待のし過ぎは禁物だと思ったが全くの杞憂だった。また一つ邦画の超絶傑作に巡り会えた!

司馬遼太郎の短編「人斬り以蔵」を参考に橋本忍が脚本を担当。監督は五社英雄で主演を飾るのは勝新太郎。脇を固める仲代達矢に石原裕次郎。更には三島由紀夫の起用…これで傑作にならない訳がない。
喜怒哀楽どの表情も一々豪快な勝新。勝新にかかれば「人斬り以蔵」と恐れられていた岡田以蔵もこんなにも人間臭く愛嬌のある人物になるのか
裕次郎は爽やかで品があって余裕もある魅力的過ぎる坂本龍馬を好演
武市半平太は仲代達矢が演じているがナイスすぎるキャスティング。勝新がペコペコするほど凄みを利かせることができて尚且つ冷酷で狡猾な人物を演じることができるのはこの人以外考えられない
人斬り以蔵と同等に恐れられた「人斬り新兵衛」こと田中新兵衛を三島由紀夫。一流俳優の中にいても存在感はピカイチで、その迫力、特に切腹シーンは圧巻
この四人誰か一人でも欠けていたらここまで傑作にならなかった。

この作品を映画館で観れたことがとてつもなく幸せ。前から二列目のど真ん中の席に座り、浴びるように勝新を観ることができた。一列目に座ってる人はいなかったので、邪魔なものはなく、視界いっぱいに広がる世界を堪能できた。
こんな素晴らしい映画体験は、この先なかなかすることはできないだろう。

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柴左近

4.0おみのが倍賞美津子だったと気づかなかった

2017年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

型にハマらない剣さばきの岡田以蔵を勝新。
銃も持たずブーツも履いてない前髪のある坂本竜馬を裕次郎。
示現流の人斬り田中新兵衛をなんと三島由紀夫!
この人の筋肉が凄まじかった。そして未来を予言するかのような切腹!
剣劇で飛び散る真っ赤な血しぶき。
悪い顔した仲代達矢。
ちょっと長い。

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消されるので公開しない

4.5勝新vs三島由紀夫の伝説的シーン

2014年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

悲しい

萌える

「首」の脚本を書いたひとによる脚本だと知った。

仲代達矢の武市と石原裕次郎の龍馬は、どうもイメージにあわない。
・・が、
倍賞美津子に甘える勝新以蔵がイイ。人斬り半兵衛演じる三島由紀夫の切腹シーンは公開翌年の市ヶ谷クーデターを予感させる。

勝新が三島半兵衛に抱きつき嗚咽するシーンと、
三島の悦に入った様な、自己陶酔させる様な切腹シーンは一見の価値有り。

以蔵が泣くシーンに流れてくる、慰めるような優しい曲も心地よい。

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泥エモンx