劇場公開日 1969年8月9日

「しっかり堪能するには最低限の歴史的知識は必要」人斬り タンバラライさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0しっかり堪能するには最低限の歴史的知識は必要

2022年9月16日
PCから投稿

そうすると一部のキャラに非常に違和感を感じるが、そこは映画。すぐに慣れてしまう。
仲代達矢が醸し出す緊張感と勝新太郎が醸し出すユーモア感と言うか、大衆娯楽感と言うか・・そういうものがバッチリ噛み合ってとても面白かった。主人公のキャラクターがとてもよく分かり、そのキャラクターゆえに陥る苦しみ悲しみというものがよく伝わってきた。こんなキャラクターをしっかり描ききった橋本忍はやっぱりすごい脚本家だ。またこの映画には橋本脚本には珍しく、主人公が女と絡むシーンがある。そこのところがあることによって主人公のキャラが非常によく伝わってくる。それと女の態度やセリフが結構ジーンと来るものがあってよかった。
難点を言うとちょっと長すぎるところかな。あと締めくくりもしっかり昇華しきったという感じがせずに少し引き締まりがこないまま終わったという感覚があった。これはストーリーの性質上致し方なかろう。何しろ橋本忍が書いてもこのようにしか書けなかったんだから。
カメラや演出もとても良かった。街並みの美しさもあったし女郎屋での人物の絵もとても美しかった。もしかしたらリマスター版で色を加工していたのかもしれないがまぁ不自然さがなくて綺麗だった。やっぱりはフィルムは美しい。演出で冴えていると思ったところは走るところだな。・・あの部分は脚本上でも非常に重要な部分で・・それをあのような音楽をつけてあのようなカメラワークで撮影してああいう映画にしたら・・監督冥利に尽きるな。それと三島由紀夫の・・これはネタバレになるのでここには書けない。三島由紀夫の演技全体は良いのか悪いのか非常に微妙だが、あのシーンだけは・・・!
あと超人気のあった石原裕次郎も魅力的だった。今の若い女の子がこん時の裕次郎を見てどんな風に思うかちょっと聞いてみたいもんだな。
とにかくこれはこんだけ長いのにあきっぽい私が一回も休憩せずに一気に見たのだから中々の映画なのは間違いない。五社英雄作品ならまずこれをお勧めする。

タンバラライ