はるか、ノスタルジィのレビュー・感想・評価
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少女を舐めるんじゃないよ
ある日漁港はアメリカの軍艦で埋め尽くされていた。主人公である綾瀬慎介は実際に見たわけじゃないが、父親のその言葉だけが頭の片隅にあった。戦後混乱期に少年だった綾瀬は75日間小樽に住んでいたが、その時の記憶を消そうとして小説家になった・・・しかし、盟友である挿絵作家(ベンガル)が急死したことにより、小樽の地に足を踏み入れた。すってんころりと水たまりで転んでしまったことから少女はるかと出会い・・・
中年オヤジと少女の恋。などというモチーフを使いながら、単なるノスタルジィ恋愛と忌まわしい過去と向き合う姿を描いた作品。人間には「忘れる才能」が授けられた。記憶力よりも素晴らしい才能だ。軍艦に関しては忘れちゃいけない記憶だということを反証材料として用いているに違いないが、出自に関して、またトラウマとなるような人間関係は忘れなければならないこと。
立派な小説家でありながら頭の中はエッチなことばかりという普通のオジさん。三好瑤子とハルカという名前の邂逅により、どこかで繋がっている運命を知るのだけど、思い出す旅の中で結局は、父親が売れない小説家で飲んだくれのオヤジ(川谷拓三)だったり、その妻(増田惠子)に売春させていたり、やがて様々な死の原因を思い出してしまう。そんな中で、三好瑤子と出会うのだけれど、その初恋の女の子まで忘れていたとは・・・頭はポンコツ。
「この世で一番悲しいことは真実を知ること」だと言う。過去の恋愛を思い出す代わりに、忌まわしい過去まで思い出してしまう。ペンネームじゃなくて本名で勝負するべきだ!という父親の言葉も、過去を乗り越え、断ち切り、自分のものにしなければならないことだったのか。などと立派なことを語っても、結局は親子丼。要はエッチなオヤジでしかなかった・・・かも。石田ひかりのヌードが眩しい。
大林作品のメートル原器
大人のファンタジーなのです このような夢物語を見たっていいじゃないですか
1993年2月公開
原作は山中恒
「転校生」、「さびしんぼう」、「あの、夏の日 とんでろ じいちゃん」の原作者の方です
でも舞台は尾道ではなく小樽です
理由は原作者の故郷が小樽で尾道は小樽とそっくりだという彼のたっての願いからだそうです
ヒロインは石田ひかり、20歳
1991年の「ふたり」の公開時は19歳になる直前でした
役のはるかの年齢はおそらく16歳くらいでしょう
石田ひかりは16歳そのものに見えます
ひたすら彼女を美しく撮る
見つめ続けたい
穴のあくほど
小悪魔的で、華奢で折れそうにか細く儚い、血が透けるほどに白く清順なのです
もうそれが本作のテーマです
青春の時の叶わなかった恋愛が時を超えて、世代すら超えて成就する夢物語です
勝野洋が演じる主人公が35年ぶりに小樽に戻って、石田ひかりが演じるはるかに出会うところから物語は始まります
ですから回想シーンは35年前の1958年頃になります
でも売春禁止法のできる以前のことのようですからもう少し前になるのでしょう
ラストシーンは未来です
おそらく劇中の現在から35年後
つまり2023年の今頃のことなのだと思います
本作公開からもうそれだけの長い長い年月が流れたのです
はるかにそっくりな少女は主人公とはるかの子供ではなく、はるかがその後誰かと結婚して産んだ娘でしょう
でも空想です
そんな未来が有ればいいなあという願望なのです
青春の時に忘れようと努力して、思い出せなくなるほど忘れていたことを思い出させてしまう映画です
それらは忘れているようで、本当は心の奥底でずっと疼いていたのかもしれません
涙が溢れてきます
なんだかなあという本作への評価は、観終わってみると星5つをつけるしかなくなっていました
本作のような夢物語を見たっていいじゃないですか
このような愛の成就をしたかった
実らなかった愛の成仏なのです
大人のファンタジーなのです
小樽に行きたくなりました
中年ロリコン
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