「戦後動乱期の混沌を描くハードボイルド・クライム・ムービー」白昼の死角 あっさり醤油ラーメンが好きさんの映画レビュー(感想・評価)
戦後動乱期の混沌を描くハードボイルド・クライム・ムービー
いやあ懐かしい。冒頭と最後の焼身自殺(最後の方は偽装。つまり殺人)でまかれていた紫色の灯油(ガソリン?)は恐らく一生忘れられません。
年がバレてしまいますが劇場公開時に鑑賞しました。昔なつかしい二本立ての時代で確か同時上映はウォーレン・ビーティ主演の「天国からきたチャンピオン」だったと記憶しています。ハンサムな主人公が織りなすロマンチック・ファンタジー・コメディと本作(つまり背徳感満載&ドロドロのクライム・ムービー)・・・どういう人に見に来て欲しかったんでしょうか。
夏木勲(後の夏八木勲)演じる東大出身(恐らく中退)の鶴岡七郎は正に「狼は生きろ。豚は死ね。」を地で行くねじ曲がったエネルギーに満ちた悪のカリスマ。「俺は豚を食って肥え太った狼を食ってやる」と自信満々に犯罪(詐欺)を繰り返し(おやおや、”狼は生きろ”じゃなかったでしたっけ。この人にとって生きるべき狼とは自分のことなんですね。)、騙された被害者のなかには責任の重さに耐えかねて割腹自殺に至った人もいるというのに、果ては保釈中の身でありながら罪もない自分の身代わりを焼身自殺を偽装して殺し、海外に逃亡するという、この人からは罪悪感というものが全く感じられません。天知茂演じる検察官が保釈前に七郎に対して言った「お前は死神みたいな奴だなあ。お前の周りで沢山の人が死んでいく。」が彼の人物像を如実に表しています。
とは言え詐欺の手口としてはそんなことで騙せる?というようなものもちらほら。代金を改めようとした相手に「待ってください。こんなに苦労して用立てた私に対してねぎらいの一言もないんですか。」などと訳の分からないことを言って金の確認をさせないまま酒宴になだれ込み、泥酔させて株式投資を持ち掛けるなんてことがもし本当にできたのであれば、それは騙された方も悪いですし、その金で本当に株を買ったというなら買ったその株券を見せろで済む話ではないかと。
レーティングがなかった時代の作品とはいえ、島田陽子や丘みつ子との濃厚なベッドシーンといい、今ならR-18指定間違いなしの本作を全年齢対象作品にカテゴライズしたまま放置していていいのでしょうか。昔の作品も今の基準に合わせて遡及的にレーティングすればいいのにと思ってしまいます。レーティングされていないことも含め、問題作過ぎてもはや地上波では流せないでしょう。
主題歌が「欲望の街」でなければこれほどの映画にはならなかったでしょう。何故いまだにフルコーラス歌えるのか思い出せませんが、きっと若い人達にポカンとされてしまうのでカラオケで歌うのはやめておきます。