「ねらわれた映画」ねらわれた学園(1981) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ねらわれた映画
大林宣彦監督1981年の作品。
本作を機に、何度も映像化されていく眉村卓の青春SF小説。
ある日突然超能力を持ってしまった女子高生。謎の転校生美少女と彼女を送り込んだ“栄光塾”との超能力バトル…!
中でも本作は特に有名。所謂角川のアイドル映画を確立。
大林作品としても認知度は高い方ではなかろうか。『時をかける少女』は“尾道三部作”の一篇だが、個人的にそれに続く“アイドル×青春ファンタジー”の一篇と括っている。
『時をかける少女』は心に残る作品ではあったけど、出来映えなど完璧に褒められるものではなかった。それに増して本作は…。
原作からヒロインの名前変更は賛否分かれる所。
が、薬師丸ひろ子の初々しさ、可愛さについてはあれこれ言う輩は居るまい。
だって、彼女を見る為のアイドル映画なのだから。
松任谷由実の主題歌『守ってあげたい』に乗せて登校するOPは、まるで彼女のPVのよう!
今では素敵な名女優だが、昔は本当に可愛らしいアイドルだったんだなぁ…。
彼女と対する転校生美少女、長谷川真砂美のヒール&クールっぷりもいい。演技は下手だけど。
しかし、だ。
序盤は普通に青春映画として悪くない。
みちるが転校してきて生徒会長の座に就いてから、色んな意味で異様になってくる。
そしていよいよ、学園を世界を支配しようと動き出す“栄光塾”。
ここから一番の見せ場なのに…あれれ~??
黒幕、魔王子。ヘンテコかつら、白塗りフェイス、土手っ腹には大きな目玉、安っぽいマントの如何にもな世界征服スタイルはまるで宴会芸。峰岸さん、いい役者なのに…。
超能力やサイキック・バトルはアニメーションやオプティカル合成を駆使し、大林監督ならではのユニークな表現。でも、『HOUSE/ハウス』や『時をかける少女』より特筆さに欠け、すばり言っちゃうと、チープ…。
見た後、不思議な心地良さや余韻が残るのが、大林ファンタジー。
だけど本作は、ノスタルジックさも、ファンタジスタさも、オリジナリティーも、何も感じられなかった。
ひょっとしたら、大林監督でも太刀打ち出来なかった何者かが、超能力で本作を駄作にしようと狙っていたのかもしれない…。