「戦争はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。 米子映画事変万歳!🙌」肉弾(1968) たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。 米子映画事変万歳!🙌
終戦間際の太平洋戦争時を舞台に、最後の休日を過ごす特攻隊員の姿と、その特攻作戦の顛末が描かれた戦争映画。
名匠・岡本喜八監督の代表作。
『日本のいちばん長い日』の翌年に公開された、『日本の〜』と対をなすと言われている傑作(『日本の〜』を観ていないので個人的にはなんとも言えないけど💦)。
両作品とも仲代達矢がナレーションを担当していることからも、この二つの作品に関連性があることが窺える。
作品は前半と後半でその趣を大きく変える。
前半は、人としての喜びとは何ぞや、という非常に本質的かつ単純な問いに対するアンサーのような展開。
後半は超現実的な空間に主人公が身を置き、より観念的に戦争の愚かさを説いてゆくような展開になる。アントニオーニの『砂丘』を思い出したが、『砂丘』の方が後の作品だった。もしかしてこの作品からインスピレーションを得ていたりして?
こう書くと小難しい映画のように思えるかもしれないが、本作は基本的にはコメディ🤣
田中邦衛や笠智衆など、コメディアンとしても一流な役者のとぼけた演技は笑えるし、何より主人公を演じる寺田農の顔芸が素晴らしい✨
これまで寺田農といえば悪役のイメージが強かったけど、こんなにコメディアンとしても優れていたとは!おみそれしました👏
コメディだからこそ、クライマックスのあまりにシニカルな、ほとんど漫☆画太郎作品のような展開に込められた反戦メッセージがずしんと胸に響く。
特攻隊を全く美化することなく、その愚かさのみを徹底的に伝えようとしているところに、岡本喜八監督の矜持を感じる。
右翼が岡本邸に乗り込んできたというエピソードもあるが、たしかにこの作品は一部の人間の逆鱗に触れるものだろう。
東洋の神だろうが西洋の神だろうが、そんなものはなんの役にも立ちゃしない。せいぜい昼寝の枕になるだけだ。
靖国だの天国だの、そんなものに何の意味がある?
人間が生きるってことは、食べる出す抱く眠る、そんな「肉」の欲望以外に他はなく、それ以上でも以下でもない。
根源的な欲望と快楽があるからこそ、人生には生きる価値がある。
神様になるのも、ゾウリムシになるのもゴメンだね。
全く泣かせようとして作られた映画ではないだろうに、主人公の弾丸のように真っ直ぐと生きる姿を見ているだけで涙が出てきて止まらない😭
ちょっと中盤から後半にかけて間伸びしているとは思ったが、それを差し引いても傑作であることは間違いない。
前半の雨&裸が凄まじい〜!☔️
※岡本喜八監督の地元、鳥取県米子市で毎年開催されている「米子映画事変」でのイベント上映で鑑賞。
岡本喜八監督の奥さんでプロデューサーでもある岡本みね子さんも来場され、色々とトークを聴かせて頂きました。
壇上で涙を流しながら、深々とお辞儀をして観客にお礼を言われていた姿にもらい泣き…😭
今回で10回目を迎えた「米子映画事変」。
主催者は知る人ぞ知るプロデューサーの赤井孝美さん。
今回のゲストは、赤井さんを先輩と慕う『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』の監督である樋口真嗣さんと、TV版『ウルトラマン』シリーズの監督を務める田口清隆さん!
『シン・ウルトラマン』や『仮面ライダー BLACK SUN』の制作で死ぬほど忙しいはずのお二人ですが、まさか僻地鳥取まで来ていただけるとは〜😭
樋口真嗣監督なんて、一日中イベントに出続けてくれていて、業界の噂通りとっても良い人であることが伝わってきました!大河ドラマで渋沢栄一が取り扱われたことに対する毒舌もチラリと…笑。NHKから出禁になりますよ監督!
とにかく出演者と観客の距離が近い映画祭で、こじんまりとしていながらも凄く楽しいイベントなので、来年は皆様も是非ご参加ください♪