南極物語(1983)のレビュー・感想・評価
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タロとジロ
実写の日本映画の興行成績としては今も歴代2位のメガヒット。
南極・昭和基地に置き去りにされながらも生きていた樺太犬、タロとジロの奇跡の実話。
日本映画の記録に、日本人の記憶に、色んな意味で残る名作。
最初の1時間くらいは辛抱して、映画がやはり面白くなるのは、置き去りにされてからの犬たちの壮絶なサバイバル。
ここは一転して、創作もあるが、ドキュメント風。
想像を絶する寒さ、餌も無い。
自力で首輪を外し、この極寒の地をさ迷う。
凍死、餓死。氷と氷の間に挟まれ、氷の海に落ち…。シャチの襲撃。
15頭が、一頭また一頭と命を落としていく。
変な言い方をすれば、それが当然。生き残れる希望など無い絶望の状況…。
見てて本当に胸が痛い。
並行して描かれるのは、犬係であった二人の隊員の苦悩。
帰国後、彼らを待ち受けていたのは…。
無理もない。犬たちを見捨てて、自分たちだけ帰ってきたようなものだ。
これが現代だったら、ネット上やワイドショーなどで、何も分かってない輩が分かってるかのように、ただ批難と誹謗中傷を浴びせるだけ。
断じて故意に置き去りしたのではない。彼らの力ではどうしようもない、やむを得ない事情があったのだ。
誰よりも心痛めたのは、誰よりも犬たちと接していた二人。自分の身内もしくは自分の一部が失われたようなもの。
弁明などしない。謝罪の旅に出る。
犬たちへのせめてもの…。
犬たちと隊員たちの苦難。
それがあるから、最後の感動がある。
高倉健、渡瀬恒彦、夏目雅子…気付けば、メインキャストは皆、お亡くなりに。
グッと耐え、飼い主たちへ頭を下げる姿は、まさに高倉健の為の役。
撮影後、数頭の犬を引き取ったという渡瀬恒彦。これももう一つの“南極物語”。
全てではないが、南極ロケも敢行。雄大な景色、スケール感。
オーロラは神秘的で、南極の冬は恐ろしさすら感じる。
それら映像を印象的に盛り上げる、誰でも一度は聞いた事のあるヴァンゲリスの名曲。
結末は分かってても、何度見ても、最後は感動。
タロとジロへ呼びかける健さんの表情、タロとジロを抱きしめる二人の姿が忘れられない。
『南極物語』は犬たちの悲劇だけじゃなく、犬と人の強い絆の物語でもある。
いつぞやハリウッドでリメイク。
ハリウッドすら魅了した話であるのは誇らしく、出来映えも悪くはなかったが、他国でリメイクって事は、実話が実話じゃなくなるって事でもあり…。
虚実の境目がよくわからないけど、どの程度実話が入ってるんやろか?特...
タロとジロは生きていた
総合70点 ( ストーリー:75点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:75点|音楽:75点 )
南極の厳しい自然の中で冒険をして生死を共にした犬たちを、鎖につないだまま置き去りにせざるをえなかった。これは辛い。せめて首輪を緩いままにしておけば良かった、苦しませないように毒を飲ませておけば良かった、罪悪感に苛まれ打ちひしがれる。南極に戻って、犬を繋いでいた場所が雪に埋もれていて、そこを掘りおこすときの思いはどんなものだったか。凍りついた犬たちの死体を見つけたときはどんな気分だったか。南極に戻るまで長い一年だったろう。
もう一つの話は鎖から離れることができた犬たちの南極での生き残りの生活。こればかりは実際どのようなものだったかは想像するしかなくて実態はわからないのだが、なかなか良く犬を訓練していると思う。だが犬たちが死んでいくところに焦点が当たりすぎて、どのようなものを食べてどうやって餌をとったか・どのような日常をおくってどうやって生き抜いていたのかという部分の描写が少ないのが不満なところ。本来は生存のための努力と死の両面がしっかりと描かれてこそ、南極の厳しさがよりわかるものだろう。鎖から脱出することが出来なかった犬たちは最後の場面で掘り出されるまでほったらかしだったのも残念で、餌もとれず雪に埋もれるまま餓死か凍死する場面を、厳しいけれど挿入していてもよかったのではないか。
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