劇場公開日 2024年12月27日

「死の影、異界への入り口がすぐ手に届く感覚」夏の庭 The Friends あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0死の影、異界への入り口がすぐ手に届く感覚

2025年1月3日
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鑑賞方法:映画館

子どもの視点によって死が身近にあることを感じさせる作品というのはかなりたくさんある。昨年公開のどちらも海外の作品だが「ミツバチと私」とか「夏の終わりに願うこと」とか。
もちろん、本作は「スタンドバイミー」と同じく少年たちの死体や葬式についての興味からスタートしているから「人が死ぬこと」そのものををテーマにした映画であるのだが。
人生で最初の葬式、つまりそれは人の死に初めて接したときということだが、私の場合は祖母だった。小学4年生のときである。そしてそのお葬式やお棺の中の故人の姿は本当に目に焼き付いている。その後、数限りなく人の死には立ち会ってきたが、やはり最初の体験がもっとも生々しく記憶されている。それは生と死のはざま、すぐそこに死があることを初めて実感したからに相違ない。
この映画で、3人の少年たちはおじいさんと知り合い、おじいさんの家を手入れすることによつてどんどん親しくなっていく。でもいずれかにはお別れしなければならない宿命。だから子供たちとおじいさんの微笑ましいやり取りの背後に死の影が差していることを、夏の庭の木や草や、虫や、風や、日差しなどに色濃く感じ取ることができる。その映像が素晴らしい。
そしてあちこちに覗く異界との接点。もちろん井戸や、最初に少年の一人がおじいさんを追いかけて行き着いた病院の霊安室はそうだけど、台風の時の窓の外や、おじいさんの妻だった老女や、そしてもしかすればおじいさんの家そのものも異界への入り口である。それらの入り口は皆、死へ不可逆的に繋がっている。ただ少年たちは若く未来があり異界=死とは感じられないのかもしれない。彼らには、これら異界との接触もまだまだ懐かしく輝かしく記憶されるのだろう。我々がかってそうだったように。
1994年の作品。少年たちの言葉を聞けば、神戸が舞台であることが分かる。事実、ロケの大半は神戸で行われた。阪神大震災の前年である。そして主役の三国連太郎はともかく相米慎二も主題歌を歌った坂井泉水も早世した。複雑の思いで振り返る作品である。

あんちゃん
talismanさんのコメント
2025年1月5日

いい映画でした。私にとっても最初の死は小学校4年、母方の祖父でした

talisman