TOMORROW 明日のレビュー・感想・評価
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そこで 時は止まる
「風が吹くとき」を観たあとに、
これもいつかは観るべきだと、心していた作品です。
一組の若者の祝言を中心に、その家族や友人たちのエピソードと、それぞれにとっての「前日」が語られます。
そう。本作品の題名は「明日」ですが、映画の内容はすべて「前日」。
前の日の、庶民の生活なのです。
井上光晴の原作。
淡々と、ありふれた市井の人々の暮らしが語られるだけで、
そこでストンと物語は終わる。
・・こういう文学的形式。
「午前11時2分に何が起こったのかは
あなたはご存知なんでしょう?」
と、鑑賞者は突き放されるかたちです。
「前日」を知る事は、残酷です。
私事ですが、スマボのメールのクラウドが満杯だとの表示が出たので、不要な受信送信の履歴をどんどん消去していました。
高齢の母との、あれやこれやの交信がこんなにも多かったのか!とびっくりするようなメールの本数。
それをサーっと流し読みしていて
ある時点で手が止まってしまった。
《この翌日に母が倒れる》
その「日付」に画面が到達しそうになって、僕は作業をやめてしまった。履歴を読めなくなってしまったのです。
胸騒ぎと、冷汗。
赤い月。
映画は、
平凡すぎて、退屈で、
誰の興味を引かないような、 ドラマ性のない日常の上に、
そんな彼らの上空に、リトル・ボーイは炸裂した事だけを伝えます。
そういうことです。
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