劇場公開日 1961年10月29日

妻は告白するのレビュー・感想・評価

全6件を表示

3.0危険な情事

2023年8月26日
iPhoneアプリから投稿

火サス系譜の源流。 終盤の若尾のあの立ち姿から「危険な情事」を一本撮れそう。 川口浩の味気無さを邪魔にならない演技と評すか。 この美人妻にして気持ち悪く酷過ぎる昭和亭主の描写が作劇のバランスを欠く程に濃い。 見て損無し。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
きねまっきい

3.5別れる決心

2023年6月11日
iPhoneアプリから投稿

パク・チャヌク『別れる決心』のリファレンス元として本作が挙げられていたのをちらほらと見かけていたが、ギミックといいそこに展開されるドラマの顛末といい思った以上に『別れる決心』だった。 本作も『別れる決心』も男が女の心情をうまく見定められないがゆえに悲劇が起きてしまうというものだ。『別れる決心』では主人公の刑事が50年代ノワール映画的なファム・ファタール幻想を終ぞ捨てきれず、殺人容疑者の女を自死に至らしめてしまう。一方本作では主人公の青年が相手の女に過度な潔白さを求め、「人を殺すような人間に人を愛すことはできない」ともっともらしい正論を並べ立てる。文字通り命を賭けた愛情表現を冷たく退けられた女は自ら命を絶ってしまう。 人間を一つの端的なイズムに還元することは不可能だ。人間はそこまで単純じゃない。女をファム・ファタール幻想や潔癖主義に押し込めてしまうというのも、結局のところは神聖視という名のミソジニーである。この無意識の蔑視が招来する悲劇を巧みな脚本と演出で描き出したのが『別れる決心』だが、まさかその半世紀以上前に同じような映画が既に存在していたとは… ただまあ作品の1/3ほどを占める法廷劇のシーンは口頭で述べられたシチュエーションが映像によって淡々と追認されるだけなので正直やや退屈気味。増村保造の映画にしては映像にあまり華がないように感じた。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
因果

3.0和服姿 絶品

2020年2月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

若尾文子主演・増村保造監督1961年モノクロ。 冒頭から緊迫したムード。裁判が進むにつれ分かってくる真相。しかしただの裁判劇ではなかった。 虐げられられる女を描くにも容赦のない増村演出。情念が滲み出てくる若尾文子が凄い。ラストの濡れ髪で歩く美しさと狂気を含んだその姿よ! 若く世間知らず風な川口浩も良かった。 愛と情念と狂気の違いとは?と自問してしまう内容でございました。90分でこの濃さよ。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
散歩男

5.0若尾文子の、高い演技力と肉体のエロチックさが本作を成立させている事が良くわかります

2020年2月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

強烈な余韻が残される傑作です 法廷シーンから始まりますが法廷劇ではありません むしろ判決がでてからの終盤こそが本作のテーマです それまでは背景の説明にしか過ぎないのです タイトルどうり妻は告白をします しかし本当の殺人者が誰であったのかはラストシーンで明らかにされるのです 若尾文子の、高い演技力と肉体のエロチックさが本作を成立させている事が良くわかります 女の愛の深さ クライマックスの若尾文子が演じる彩子が幸田の会社にずぶ濡れで訪問する鬼気迫るシーンは伝説のシーンです 強烈です 衝撃ですらあります このシーンは忘れられないものになると思います

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あき240

3.0殺意の立証

2016年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

北穂高で転落事故が発生、三人のパーティで二人が落下、ぶら下がった二人のうち、上にいた方がロープを切ったため、一人が亡くなる。 亡くなったのは大学教授(小沢栄太郎)、ロープを切ったのがその妻(若尾文子)、二人を支えていた若者(川口浩)は妻の不倫相手では、と疑われていた。 裁判は、動機がある妻の殺意が立証できるかに注目が集まった。 増村保造の撮る若尾文子は格段に美しい。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
いやよセブン

2.0悪役・小沢栄太郎

2015年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

この時代の作品を観るようになって気づくこと。 脇役に素晴らしい個性派がいるということ。しかもその人たちの多くが脇専門。 若尾文子に殺される夫を演じる小沢栄太郎もその一人。この人本当に嫌なオヤジの役がはまっている。 でも私生活ではきっといいお父さんなんだろうな。と勝手に想像していたのだが、なんと山岡久乃と浮名を流し、奥さんは自殺してしまったとか。 ニッポンのおっかさん・山岡久乃をして道ならぬ恋に誘い込むなど並のスケベ男のできることではない。畏怖の念すら覚えるこの俳優は映画史に残る作品を何本も支えている。 溝口健二「雨月物語」主人公・森雅之の妹婿で、武士に取り立てられて出世をするが、最後には身持ちを崩してしまう。溝口作品は他に「近松物語」にも出ている。 小津安二郎では「長屋紳士録」 川島雄三では「特急にっぽん」 成瀬巳喜男では「女が階段を上がるとき」 と名匠との仕事は枚挙にいとまがない。 増村保造の本作でも本当に嫌な夫を、男でも憎悪するほどに(そりゃ若尾ちゃんを不幸にする奴だから当たり前だけど)憎ったらしく演じている。 ザイル切られて当然。むしろそのことで不幸のどん底に落ちていく若尾に同情するのはごく自然な心情なのである。解釈の余地もないほどの嫌な奴を演じられる稀有なる悪役である。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
佐分 利信