「「バカバカしくてやってられるかよ」の覚悟」近頃なぜかチャールストン La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
「バカバカしくてやってられるかよ」の覚悟
岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その10
学生時代にこれを観ていたら「なんじゃこれ?」と、悪ふざけ映画にしか感じなかっただろうなと思います。もう少し引いて観る事ができるこの歳だからこそ、或いは新たな戦前の現在だからこそ楽しめた作品でした。
戦争を生き抜いた老人達が、「邪󠄂馬臺國」を称して独立を宣言すると言うお話ですが、それは井上ひさしさんの「吉里吉里人」の様な強い問題意識に根差した主張ではありません。「もう国なんて使用できないので我々は好きな事をさせて貰うので、とやかく言うな」という程度の我儘宣言なのです。そこには、先だって観た「ジャズ大名」にも通底する「バカバカしくてやってられるかよ」のケツをまくった覚悟が伺えます。客席からは何度も笑いが沸き起こりました。
作品は見るからに低予算なのですが、そこに集う俳優さん達がビッグネームの方ばかりで、そのチグハグ感が実に様になっています。特に、殿山泰司さんの何ら着飾る事のない猥雑さは本当に素晴らしかったです。現在それに相当する様な俳優さんは見当たらないし、存在も難しいのではないでしょうか。
そして、本シリーズのもう一つのお楽しみゲスト・トーク。今回は本作の脚本も担当された利重剛さんでした。映画界に導いて下さった岡本監督への敬意が溢れながら、脚本・撮影・編集を通じたお話が面白くて面白くて大笑いしている内にたちまち時間となりました。
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