太平洋奇跡の作戦 キスカのレビュー・感想・評価
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戦争映画なのだが…。
〈映画のことば〉
「礼は、後で、まとめて言う。
だが、それは、キスカの5,200名を無事に連れ帰ってからだ。」
米軍が制海権を握っているキスカ島からの撤退作戦。それ故、万が一にも会敵すれば壊滅的な被害を受けることは確実な情勢。
しかも、作戦目的は将兵の撤退という最初から戦果ゼロがわかっているうえに、資源(兵力、燃料)も限られている―。
そんな作戦でも、その意義を衷心から理解してベストを尽くす大村少将の姿には感動を覚えます。
こういう困難な作戦であるからこそ、川島中将にわざわざ抜擢されたという付託に応(こた)えて、その使命を見事に果たしたい。
そう思うのは、おそらく大村少将や評論子だけではないことでしょう。
もともとが、戦争という始めなければ良かった題材ではあるのですけれども。
評論子にとっては、気持ちがくじけそうなとき、勇気を与えてくれる作品として、秀作としての評に値する一本です。
(追記)
〈映画のことば〉
「帰ろう。帰れば、また来ることができる。」
〈映画のことば〉
「(後続艦が)迷子になったのは、いつ頃だ。」
「まだ、そんなに経っていません」
「(艦砲を)一発ぶつ放してみるか。」
「やめて下さい。敵に砲声を聞かれる心配があります。」
「あちらさんには、レーダーがある。(砲声を)聞かれるくらいなら、とっくに見つかっているよ。」
〈映画のことば〉
(味方艦同士が)衝突するくらいだから、霧は満点だ。
ぶつぶつ言ったら、バチが当たる。
〈映画のことば〉
「両舷停止」
「えっ、止まるんですか。」
「島の西側に回ろうかと思うんだ。」
「むちゃです。水路の研究がまったくできていない。それに、この辺は浅瀬が続きます。」
「いや。潜望鏡片手に乗り切った男がいるんだ。伊七号潜水艦の艦長だよ。」
「しかし、(潜水艦ならいざ知らず)隊伍を組んだ艦隊が…。自滅しに行くようなものです。西側に回れば、水路の危険には確実にぶつかります。しかし、東側に回っても敵にはぶつからないかも知れません。」
「島の兵隊たちには、もう一日だけ待ってもらう。艦隊は西側に回る。」
困難な中でも、大村少将の肝の座った、部下の度肝を抜くような決断には、胸のすくような思いもします。
困難な状況の中で。
評論子が「勇気をもらえる」という所以(ゆえん)でもあります。
面白い日本製戦争映画
昔、劇場の二本立ての一本で、メインは「赤ひげ」だったような気がするが、自信なし。
連合軍に取り囲まれた、アリューシャン列島のキスカ島に駐留する日本兵約5200人を救出する話。
日本の戦争映画は悲劇的なものが多い中で、玉砕を避けるための作戦があったことがちょっと誇らしい。
特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です!
特撮はもちろん円谷英二
公開は1965年6月19日です
三大怪獣地球最大の決戦 1964年12月20日公開
フランケンシュタイン対地底怪獣 1965年8月8日公開
本作はこの二つの怪獣映画に挟まれて製作されたました
つまり本作は怪獣映画のピークに達した時に製作された作品であると言うことです
さらに言えば怪獣映画だけでなく東宝特撮が世界の特撮界の最先端を誇っていた時期だということです
但し本作は白黒作品です
本編監督の丸山誠治監督の出来る限りドキュメンタリータッチにしたいと言う意図でそうなったのかも知れません
公開日が6月の梅雨時だということは一番客入りが低調な時期ですから予算を掛けられない
単に、それだけのことであったのかも知れません
しかし、本作の舞台がアリューシャン列島のキスカ島という夏でも極寒の荒涼した島です
火山灰が降り積もったとおぼしき黒い岩と砂、そして雪という白黒の世界
空は暗く、白い濃霧が立ち込め、海もまたそれを写して鉛色です
そして救出に向かう艦隊もまた灰色の軍艦色
何もかも無彩色の世界なのです
だからこそ、本編監督が演出の一環として白黒撮影を選択したのだと思います
それは大成功していると思います
いずれにしても特撮班からすればどちらでも同じです
ミニチュアセットや飛行機の繰演、爆発シーン
やることは同じです
しかし、最高潮に達していた円谷英二の特撮班はこの白黒撮影を活かしてよりリアリティのある特撮映像をものにしています
艦隊根拠地の泊地に停泊する多数の艦艇シーンのリアリティ!
正に実写のような軍艦の巨大さ、鋼鉄の質感を表現出来ています
1/ 700スケールのウォーターラインシリーズという、軍艦の喫水線から上だけの精密なプラモデルを幾つも作ったことある男の子なら、おおおおっ!となることは間違い無しです
島の西側の未知の水道を迂回するクライマックスは手に汗握るシーンでした
そして近づいてくる軍艦の発する地響きのような重低音の機関音に気づいて哨所の兵が島の直ぐ脇をかすめるように進む軍艦をあっけにとられて眺めるシーンの軍艦の巨大さの表現は素晴らしいものでした
本編監督の出来るだけ実際に忠実に撮影するという方針は、特撮パートでも徹底されており爆撃機や戦闘機の交渉もしっかり成されています
ただイ号潜水艦を攻撃する航空機の映像は多作品からの流用であるため英軍のマーキングであるのはもったいないことですが、一瞬のことです
日本の特撮は怪獣映画やSFものスーパーヒーローものがまずイメージされます
しかし、本来戦争映画から日本の特撮は出発したのです
こちらの戦争映画の特撮の方が本流と言うべきなのだと思います
低予算でよくこれだけのクオリティを成し遂げた当時の特撮の技量の高さを是非堪能して頂きたいと思います
本編のドラマも大変出来がよく、オジサン俳優総出演というべき重厚さです
特撮ファン、戦争映画ファンどちらにもオススメできる傑作です!
本作は戦争映画だから、戦争を賛美している?
馬鹿言っちゃいけない
本作は反戦映画であると真面目に断言します
兵もまた人間です
同胞の命を大事に扱えないような軍隊は負けて当然なのです
それをなんとか一例だけでもやり遂げた
そのヒューマニティの精神を賞賛することが本作のテーマなのですから
最初のキスカ島突入時、霧が晴れ始めて突入を迷うシーン
艦隊の各艦と参謀より口々に突入の意見具申が上がるなか、司令官は断腸の思いで断固反転を命令します
これは宇宙戦艦ヤマトでの冥王星会戦での沖田提督と古代艦長との名シーンの元ネタになっていると思われます
円谷英二の特撮が光る逸品
面白かった。
第二次世界大戦で日本は敗戦するし、特攻隊やら、玉砕やら、命を粗末にすることが「お国のため」「戦争に勝つため」として勇ましい姿のように見られた時代だけど、そんな中で『キスカ島救出作戦』のような人を助けるために全力を尽くした話が実在した事は、戦争に勝つ事とは縁遠い作戦だけど、素晴らしい事だと思う。
これぞ、日本人の誇りを描いた映画なんじゃないかな?
題材がイイね。
特撮がかなり凄い作品だと思った。
とにかく爆発がスゴイ。花火ではなく爆発だし、爆薬を使う量も多いんだろうシーンがいっぱいある。映像の切り貼りやミニチュアの活用とかで、上手く見せているんだろうけど、違和感ない仕上がりになっており、寧ろかなり迫力がある映像が多い。特に敵戦闘機を撃ち落とすシーンなんかはど迫力である。最近みた『連合艦隊』はミニチュアが前面展開されていたので、それと比べると、ほんとに素晴らしい出来だと思う。
霧隠れ救出作戦
『ダンケルク』という実話を基にした撤退作戦の戦争映画があったが、日本にもあった。
1965年の東宝特撮戦争映画。
敗戦色濃く、太平洋の島々の日本軍はことごとく玉砕。
キスカ島の5200名の兵も玉砕覚悟。
米軍に包囲されたそのキスカ島から全兵を救出。一人も傷付けずに。
太平洋の奇跡と呼ばれたキスカ撤退作戦。
その作戦というのは、濃霧に紛れて島に近付き、上陸するというもの。
盲点を付くと言うか、何とも大胆不敵!
ぬか喜びさせない為に、島の兵にも極秘。
米軍にレーダー傍受されてもいいように、敢えて島の兵たちに玉砕を促すような電報を。
指揮を執るは、目立った戦歴は無い司令官。
あくまでこれは戦いに勝つという作戦ではない。
冷静沈着。判断力。忍耐力も求められる。
結果的にはドンピシャな人選であった。
奇跡の作戦とは言え、全てが万事上手くいった訳ではない。
作戦決行、島に近付くが霧がそれほどでもなく、一度は目前で引き返す。
事前に島に連絡係を送り、寸前になって生きて還れる希望を持つが、その時の一旦中止の落胆は計り知れない。
やはり無理だ。俺たちは還れない。
全員玉砕の覚悟。
覚悟は救出側も同じ。
覚悟を持って、作戦再決行…!
特撮は勿論、円谷英二。
要所要所の特撮シーンもさることながら、作戦の要、霧のスモーク演出はさすがの匠の技。
ハリウッドの戦争映画マーチを彷彿させる團伊玖磨によるマーチ曲も軽快。
戦争映画は捉え方が難しい。
本作だって、日本軍万歳!と見えなくもない。
人を殺す戦争。
でも、人を救う行為も。
娯楽和製戦争映画としてもなかなか面白かった。
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