台風クラブのレビュー・感想・評価
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今こそ本作と家族ゲームを受けて令和の時代の台風クラブをリメイクしなければならない
家族ゲームに遅れること2年
ここでは家族のゲームを演じる家庭どころか
親すら登場しなくなっている
健の親が台詞もなく一瞬映るのみだ
それも彼の家が困窮家庭でネグレクトされていることを説明する為だけに登場する
ただいま、お帰りなさいの台詞はそれを表現するものだ
理恵が寝坊した時に父も母もいない
母を呼ぶだけで、父は呼びもしない
彼女は誰もいない家で母の布団にくるまり自慰をする
それは愛情に飢えている表現だ
台風の中の商店街で出会うオカリナを吹く不思議な男女
あれば彼女の両親の投影だ
オカリナはオカルトのもじり
彼女のオカルト趣味は両親から来ているものなのだろう
しかしその両親は娘の助けの求めには応えてくれず、全く取り合ってもくれないのだ
仕方なく警官の人形にすがるのだが勿論応えてくれるわけもない
兄弟も三上の兄だけが極短時間姿をみせるだけだ
その兄も弟への声かけは家計の心配、ひいては自分にどのようなしわ寄せが来るのかの心配によるものだ
思春期の不安定な精神を正面から受け止めてくれる家族はどの子供達にもいないのだ
子供達だけで思春期の精神の不安定さを乗り切ろうとするほかないのだ
台風という思春期の熱病の嵐の中で子供達は、所詮遊びつかれたら眠るだけの何もできない子供であることを知る
家出をして東京にいく、彼女を襲う、自殺を図る
これらは全部子供たちの夢想に過ぎない
だから、シャイニングや犬神家の一族の有名シーンのオマージュがあるわけだ
台風が去り子供達の精神が安定すれば、空は明るく晴れ渡り子供達は表面的には何事もなく学校に向かい日常にもどるのだ
一方、大人の代表たる梅宮先生は大人達だけで台風の中カラオケをしている
そこには濃密な心の触れあいがあるが、それは大人だけでしかない
家族が作られようとしているのだが、あの二人が結婚しても果たして普通の家族になり得るのか
それを先生の彼女の父の刺青が不安として表現している
子供達の親は団塊の世代の始めだろう、梅宮先生はその終わりの年頃にあたる
子供達は団塊ジュニアの走りになる
この構造は家族ゲームと同じだ
しかし本作では家族ゲームで松田優作が演じた家庭教師に相当する梅宮先生まで、子供達を突き放しているのだ
彼は子供達に夢や希望を与えようなどとはこれっぽっちも思っていない
それどころかか15年もたてば自分のこのような姿に成り果てるのだとさえ言い放ち子供達のそれを破壊するのだ
こうした家族の環境の中で団塊ジュニアは育ち今や大人になり、本作で登場しない親の歳になっているのだ
本作公開からそれほどの時は流れたのだ
子は親にされたようにしか子供を育てることは出来ないものだ
一体いまの中学三年生は台風が来たら、どう子供達は乗り切っているのだろうか?
ネットの中に避難しているのかも知れない
今こそ本作と家族ゲームを受けて令和の時代の台風クラブをリメイクしなければならないと切に思う
あの世とこの世の狭間
逸脱した表現が多いように思えますが、めちゃくちゃ本質的なことが描かれている映画だと感じました。
心身の急速な変化により情緒が不安定になる思春期と台風を重ねる演出はベタながらもとてもわかりやすいです。実際、思春期の彼らにとっては内側に台風を抱えている状態ですし。彼らはなんとか現世に足をつけて踏ん張っているものの、何かの拍子ですぐにあちらの世界に巻き込まれてしまう。本作では台風によって異界に飛ばされてしまった中学生たちの物語でした。寓話として完璧なのでは、と感じています。
登場人物で注目したのは、リエ、ミカミ、シミズの3人。共通するのは家族とのつながりの薄さです。軸というか根っこが弱いため、外的なエネルギーの渦に容易に巻き込まれてしまう。リエのスプーン曲げや顔に描く模様は、魔的な力を内側に取り込んでなんとか強くあろうとしているようにも感じます。今で言う、邪気眼的なやつですね。通過儀礼としての厨二病。
シミズにおいては要支援家庭ですよね。貧困とおそらくネグレクト。「おかえり」「ただいま」はシミズの寂しさがだだ漏れでヤバすぎるし切なすぎる。ミカミ家はさほど目立たないけど、知性ばかりの交流が目立ちます。
とはいえ、リエやシミズは台風とともにあちらの世界に飛ばされますが、途中でふと我に返ることができます。目が覚めて、現世に戻ってくるイメージです。
そこに、人間の持つしぶとさとか、原始的な強さみたいなものを感じました。異界に惹かれても、結局生きるのは現世。守りのない中で、揺れながらもギリギリで踏みとどまれる力には健康さを感じます。一見、どうみてもヤバいシミズですが、良い環境に出会えればちゃんとした人間に成長するかもしれません。
一方で、大人は総じてクソです。家族の薄さも印象に残りますが、やはり三浦友和演じる先生のインパクトが強烈。流されて自分を生きれず、その虚無からくるフラストレーションを教え子にぶつけるという、凄まじい屑です。
「お前も15年経てば俺みたいになるんだよ」
という、ミカミに対してカマした台詞は、15歳の少年にとっては未来を失わせる呪いの言葉以外何者でもないです。
台風クラブのメンバー全員が無事だったわけではありません。思春期を迎えた彼らはあの世とこの世の間を揺れますが、この世に戻る力があります。しかし、一歩間違えば、この世に帰れない危ういバランスの上に立っているのです。
そのような状況下でこの教師のような存在に遭遇して呪いをかけられると、この世に戻る力が失われます。しかも、教師ですからね、その辺のオッサンとかではなく。
このような大人メフィストフェレスであり、純度の高い悪だと思います。
本作も相米慎二らしい長回しが目立ち、中盤まではやや冗長に感じました。しかし、クライマックスはさすがで、長回しが異様な緊張感を生み出していたと思います。『もしも明日が』の徹底的に空っぽな響きには胸を撃ち抜かれました。
工藤夕貴は特異で危うい魅力を放っていて、とても印象に残ります。
そして、もっともヤバかったのは三浦友和ですね。『葛城事件』でも究極の屑人間を演じており、私にとって三浦友和は日本屈指の下衆俳優として認識されてしまいました。一見爽やかっぽいので、下郎を演じると逆にリアルなんですよね。
思春期のエネルギーをもて余す感じ
・力加減が分からない暴力性
・嵐の中教室や体育館の壇上、校庭で半裸の中学生が狂乱で踊るシーンはただただスゲェって感想
・特に廊下から教室の中を捉えた定点ショットのダンスシーンは印象的
・♪「もし~も、明日が~、晴れ~ならば」
・女子中学生の下着姿がこれでもかと惜し気もなく見せてきて戸惑った
・喫煙、レズ、レイプまがい
・終盤の嵐が開けた朝、男子生徒が窓から飛び降りるショックなシーンだが、クラスメートが降りてみてみると上半身が突き刺さる犬神家スタイルでギャグなのか何なのか…
相米監督への苦手意識を確立した作品
ジム・ジャームッシュも注目した映画だが、僕にとっては凡庸な作品でしかない
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