次郎長三国志(1963)のレビュー・感想・評価
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娯楽痛快時代劇
現代で言うとコメディにあたるのだろうか?
いや、実に楽しい!
そして、歌う!
清水の次郎長一家の成り立ちを追っていくのだけれど、あれよあれよと、個性的な仲間が集ってくる。
その中心、清水次郎長を演じるは鶴田浩二さん。
押しも押されもせぬ、当代随一の大スターだ。
まあ、これが実に屈託のない親分で…懐のデカさといったら他に類をみない。
台詞にもあったけど「俺はいいやくざになる」ときたもんだ。それまでのやくざ像からすると実に破天荒な親分なのであろう。
最初の子分が桶屋の鬼吉。
これがまた名古屋鈍りの軽妙な台詞回しで、物語をグングン引っ張っていく。山城新伍さんの十八番とも思えるキャラなのだが、実に小気味が良く達者なのだ。
続いて松方弘樹さん演じる関東綱吾郎が仲間になる訳だが、まぁ、身震いする程の色男。
初登場の啖呵を切るシーンがあるのだが、それまでの流れを断ち切る程の存在感が…!
BGMが流れるでなく凝ったカットを重ねるでなく…オフ台詞からの紹介カットなわけなのだが…いや、素晴らしかった。
そして侍崩れの大政が加わる。
この大政のポジションも実に周到で舌を巻く。
彼はやくざに身をやつすのだ。
彼の加入により、はぐれ者たるヤクザの境界線が際立つ結果となり、同時に次郎長一家に摂理が加わるような印象だった。
1人より2人、3人と仲間が増えるにつれ新たな知恵や知識が加わり出来る事が増えていく。
おそらくならば次郎長を介さなければ、反りの合わない面々なのだとも思う。
次郎長が両手を一杯に広げて抱えてくれてるからこそ一家として成り立つのだろうと思える程に個性が豊か、癖が強い!
キャスティングと脚本の合わせ技とも言うのだろうか…見事な構成とテンポなのである。
この作品に生息する役者陣もまぁお見事。
藤山寛美さん夫妻とか…もう見所しかない感じなのだ。松竹新喜劇の大スターだ。
鶴田浩二を相手に全く怯む気配がない。
我が道を行く。
喜劇役者の喜劇役者たる存在感が霞む事は1秒たりとも無かった。
ラストはサラシにキマタ姿で傘を被って街道をランニングするカットだ。
現代でいうなら下着に帽子の姿なわけだ。
なぜこんな姿なのかにも勿論訳があって、世話になった料理屋の亭主と後に子分になる仙右衛門が、こともあろうに次郎長の着物をくすねて博打で丸裸にされるわけだ。
帰ってきた朝にも一悶着あって、それはそれで流石の藤山寛美さんなわけなのだけども、それを経て旅立つ時の鶴田浩二さんの清々しさよ!
なんと表現していいのか分からない。
男らしいのだ。
折り目正しく、颯爽としている。
引目を全く感じない。
でも、裸同然の姿に帽子だけ被ってるのだ。
笑みが溢れる。
実に微笑ましいのである。
ワンピースの作者である尾田栄一郎さんも、このシリーズの大ファンであるらしく、世界的なヒットを記録し続けるワンピースのルーツとも思えたりする。
渡世の話であるので、義理人情のエピソードはふんだんに盛り込まれ、荒事にも事欠かない。
次郎長を支えるお蝶のイジらしさには、ホロリとくるし、寛美さんの女房役のお徳さんの甲斐甲斐しさと肝っ玉の強さには胸がすく思いだ。
流石は名匠・マキノ雅広と頷かずにはいられない。
これはほぼほぼ序章に過ぎず、これから波乱万丈の道中の幕開けな訳なのだけども、これからドンドン有名なエピソードが繰り広げられていく。
この俳優陣…いや、キャラクター達がどんな風に変貌を遂げていくのか楽しみでしかない。
まだこれ一本しか観てないけれど、おそらくならば娯楽痛快時代劇の金字塔と称される一本なのではなかろうかと推測される。
◾️続・次郎長三国志
閑話休題 2.0
第2部的な扱いで、独立したページがなかった。
前半は森の石松がメインなのだが…どおにもパッとしない。ダラダラとエピソードが羅列されていくような感じでつまらない。
次郎長に話が戻ってからは、そこそこ波風も立つのだが食い足りない感じが満載だった。
中休みというか、箸休めというか…これを経て第3部があるのだろうか?
一家としての旅が終わり清水港に凱旋するわけなのだが、エライ歓迎のされようで…このまま終わるようなら、尻切れ蜻蛉もいいとこ。
前作の余韻を引きづりつつも観れるわけだけども、今作だけだと作品としても成立してない程の有様だった。
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