劇場公開日 1955年8月14日

「とある山岳部と学者が語る夢幻の体験談...  山奥の秘境に生きる部落民と彼らが崇める獣人のユートピアは俗世との好奇心の相克ゆえに瓦解する...」獣人雪男 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0とある山岳部と学者が語る夢幻の体験談...  山奥の秘境に生きる部落民と彼らが崇める獣人のユートピアは俗世との好奇心の相克ゆえに瓦解する...

2023年1月30日
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鑑賞方法:映画館

 あのレジェンド作品である初代『ゴジラ』、そして『透明人間』『ゴジラの逆襲』に続く、戦後の東宝特撮第4作ということでネームバリューは十分なものの「表現上の諸問題」を理由にソフト化されず特撮関連書籍からもその存在を抹消されている問題作。
 件の獣人雪男のサイズがせいぜい2,3mぐらいなので怪獣映画としてはスケールの面で不適格ではありますが、一方でビジュアル的に被りそうな『キングコング』とは明確に差別化された画作りとなっており、さらには"生存者が後に証言者として事件の顛末を語る"という構図は後の『マタンゴ』にも通づるようなプロットながらも相手がいわゆるUMAゆえに民俗学的な雰囲気も漂い、数ある東宝特撮映画の中でも怪獣映画でもなく変身人間ものでもない異彩を放っている作品でした。
 巨大生物でも異形の人間でもない人の亜種、という特異な題材を用いつつも独自の特撮の見どころを盛り込みつつ、滅びゆくマイノリティーの悲哀も描いたなかなかの意欲作でした。
 しかしながらも上述の通り、異文化交流の相克と相互理解の難しさが中途半端になり、特に後半はチカを演じる根岸明美さんの妖艶なおみ足という即物的な見せ場の確保に走ってしまったのは拙速に感じつつも、一方でなるほどこの時期の娯楽映画ならでは、とも感じてしまいました。
 手軽に家では視聴できないものの、人気作だけに各地の名画座でちょくちょく上映の機会は有るので、気になった方はアンテナを張っておいていただけるとよろしいかと思います。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)