釈迦のレビュー・感想・評価
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『ベン・ハー』みたいなの作りたかったのね
YouTubeの期間限定無料配信で視聴。
一度観てみたかった『釈迦』が無料で観られるなんてありがたい時代になったものだなあと思う。
当時、大映の社長だった永田雅一が「ワシのところでも『ベン・ハー』とか『サムソンとデリラ』みたいな宗教スペクタクル超大作を作るんじゃー!」と意気込んで製作したのだという経緯を「映画秘宝」で読んだ覚えがある。
監督は座頭市シリーズの名匠三隅研次、キャストも一流どころを揃えた超大作。
なのに、どうにもへんてこなものを見せられているという感じが最後まで付きまとう。
日本人がインド人やネパール人(釈迦はネパール出身)を演じるという違和感には目をつぶるとして、釈迦のキャラクターがとにかく当たり障りがないというか、生彩がない。
本郷功次郎演じるシッダ太子がそもそもそんなに感情移入できるような人間味のあるキャラクターではないのだが、悟りを開いて釈迦となった後は雲の上の人というか、ほとんど神様みたいな描写になってしまってビックリする。
釈迦の敵となるダイバ・ダッタを演じる勝新太郎が主役を食ってしまった、とよく言われるが、主役を食うも何も、後半は主役がはっきりとした姿を見せないという、ある意味トンデモない映画だった。
インドラ神の巨像が崩壊するシーンはなかなか迫力があるが、やっぱり『サムソンとデリラ』でダゴン神の巨像が倒れる方がすごかったなあと思ってしまう。
釈迦とダイバ・ダッタというライバル関係はベン・ハーとメッサラを意識したのかもしれないが、人間描写において『ベン・ハー』にも遠く及ばなかったと言わざるを得ない。
とは言うものの、『ベン・ハー』や『サムソンとデリラ』のような宗教スペクタクル映画が好きな自分のような人間にとってはどうにも嫌いになれない、心に引っかかってくる作品だった。
天上天下唯我独尊
北林谷栄さん礼讃
京都文化博物館フィルムシアターで鑑賞。
今から60年以上前につくられたスペクタクル超大作。
日本初の70㎜フィルムの映画です(今回は35㎜版で鑑賞)。
最初は日本人がインドやネパールあたりの人々を演じることにちょっと違和感を感じたけれど、舞台・演劇のように見れば、それも気にならない。
ストーリーは、釈尊シッダッタとダイバ・ダッタの対立(といっても、ブッダはほとんど相手にしていないわけだが)を大きな構成軸としている。
伝承とだいぶ違うなと思ったところが多かったけど、そもそも2500年も前のこと。事実かどうかなんて誰にもわからないんだから、これはこれでいいのだ。
いくつかある見せ場の中で、僕がいちばん感動したのは、万灯に囲まれてブッダが説法をする場面。
いや~、北林谷栄さん、やっぱりうまいなぁ。とくに重要なシーンだからこそ、監督はここで北林さんをつかったのだろうな。ほんとにいい役者さんです。
役者といえば、山本富士子、京マチ子、月丘夢路、叶順子などなど、この時代の日本の女優さんたちは、みんな清楚で気高くて魅力的。本当に「スター」という感じがしますね。
それから、壮大なセットをつくりあげた大道具のみなさんにも大きな拍手を送りたいです。
タイトルなし(ネタバレ)
『今日ママンが死んだ』カミュの異邦人の冒頭のセリフ。かなり際どい話だが、母親殺しの匂いがする。
この映画の中では歴史的な史実に『母親殺しはない』としている。
さて、その真意は兎も角、タブーであった事は事実だと思う。
母親殺しの定義では所謂親離れを意味するとユングが言っている。つまり、それをタブーとしているのは、男は生まれ持ってのマザコンって事だと思う。
この映画はアナクロ過ぎる所はあるが、やはり、仏教と言うよりも、キリスト教の歴史に見える。その意味に於いて評価したい。
追記 この映画見た亊があったかもしれない。私の祖母が地割れに落ちる勝新太郎の話をしていたのを思い出した。もっとも、見ているわけはないのだが。まだ、3つとか4つどかの事。鬼婆と地割れの話は『名馬フリッカ』とともに耳にタコが出来る程聞かされた。つまり、見たわけではない。まさか、蜘蛛の糸が登場するとはびっくり。日本的で無い。
日本初の70ミリスーパーテクニラマ!『ベン・ハー』『スパルタカス』と同じ。
紀元前5世紀。シャカ族の王家にシッダ太子が生まれ、いきなり唯我独尊と喋った!すぐに20年後、シッダ太子(本郷)はヤショダラ王女(ソリス)をめぐって従兄のダイバ・ダッタ(勝)と争い、見事ヤショダラを妃に娶った。6年間子どもを授からなかったシッダとヤショダラ。シッダは城下を視察し、カースト制度に疑問を持ち、やがて出家する。その苦行の間、ダイバ・ダッタはしつこくヤショダラに迫り、ついに騙してヤショダラをモノにする・・・が、操を奪われたヤショダラは自害する。その非道はシッダの耳にも入るが、恨んでも仕方がないと心に閉じ込める。
子どもをさらって殺す夜叉(山田五十鈴)のエピソード。なんだこりゃ・・・
アショカ王の第一夫人(月丘夢路)からの求愛を拒んだために目を潰されたクナラ王子(市川雷蔵)と妃(山本富士子)のエピソード。山本富士子が美しい。
奴隷の娘マータンガ(叶順子)と修行僧アナンの恋物語。ここあたりから再びダイバ・ダッタが登場する。しかも神通力を使う・・・
マガダ国王アジャセ王(川口浩)のエピソード。両親と不仲であるところをダイバにつけこまれ、父王ビンビサーラを幽閉する。さらに仏陀一門を解散させるために、改宗しなければ処刑させるという振る舞いに出た。しかし、仏法を捨てるなら命も惜しまないという信者が出てくると、アジャセも考えを改める。なんというか、象を怪獣のように扱ってるところが笑える。そして、出生の秘密を聞くにあたって、杉村春子の熱演によってちょいと泣けてくる・・・
終盤では、マガダ国の神殿造りと、破壊されるシーンが圧巻。最後までダイバちゃんは僧侶たちを殺そうとするが、神が怒っちゃったのね。地割れに落ちちゃっても、救われるところが神の偉大さ。なんとなく『サムソンとデリラ』を思い起こすシーンでもあった。
史実性はともかく、大映渾身の大作なのは間違いない仏陀の物語
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