「世紀の大愚作」さよならジュピター odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
世紀の大愚作
ブラックホールによる太陽系の消滅という未曽有の危機がテーマかと思ったら無重力SEXやヒッピーもどきのテロリストが絡んだ安っぽいメロドラマになってしまった。
肝心のブラックホールだが木星の50倍の質量と言っていたがそれでも太陽の1/20、少なくとも太陽質量の5倍はないとブラックホールにはなりえない、本当に知らなかったのか、木星の衝突で軌道を変えるための方便なのでしょう。
人物も描けておらず役者のキャラに頼りすぎ、ジュブナイル向けでもないのに子供が核融合の博士ってどういうこと、軍隊もどきのじゃれ合いやすぐに感情的になる主人公の軽薄さ、森繁さんが地球の大統領というのも頂けない、せいぜい宴会好きの三流社長がお似合い、昔の英国議会をもじったのでしょうかバロック時代の楽士のようなウィッグまで付けて陳腐の極みでした。
太陽系の消滅がかかっているのにユーミンの歌まで動員して美しい木星を守りたいというのは普通の感覚では理解できないし、武装集団といってもヒッピーもどきの素人が簡単に木星基地まで潜り込めるセキュリティの甘さ、このリアリティの欠如はどうしたのだろう、とても小松作品とは思えない。いかにヒット作を書いても文壇からはSFは文学として認められないので作風を変えたのか、もともと映画作りには不向きな人だったのか・・。
やたら感傷的なBGMも不釣り合い、ナスカの地上絵や宇宙人からのメッセージ、ジョーズのパロディまでいれて盛り込み過ぎ、何を伝えたい映画なのか真意が量り兼ねる。
たぶん、昔観ていた筈なのに覚えていません、「復活の日」を観た勢いで、今度はブラックホールかと気になりました、DVDも出ていないのでVODで観ましたが作られない訳が分かった気がします。