劇場公開日 1968年11月9日

「松竹の特撮映画の短い系譜はここで途絶えてしまう」昆虫大戦争 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0松竹の特撮映画の短い系譜はここで途絶えてしまう

2021年3月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

松竹の特撮映画は4作品ある

宇宙怪獣ギララ 1967年3月
吸血鬼ゴケミドロ 1968年8月
昆虫大戦争(本作)1968年11月
吸血髑髏船 1968年11月

残念ながらこの系譜はここで途絶えてしまう

同時期、他の映画会社の特撮はどうであったか?

東宝
1967年7月 キングコングの逆襲
1967年12月 怪獣島の決戦 ゴジラの息子
1968年8月 怪獣総進撃
1968年8月 聯合艦隊司令長官 山本五十六

大映
1967年3月 大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス
1968年3月 ガメラ対宇宙怪獣バイラス
1968年3月 妖怪百物語
1968年12月 妖怪大戦争
1968年12月 蛇娘と白髪魔
日活
1967年4月 大巨獣ガッパ

東映
1968年12月 ガンマー第3号 宇宙大作戦

このように羅列して何の意味がある?
じっとリストを眺めてみれば判るはず

つまり1967年春に怪獣ブームは頂点を迎え、一気に萎んでいったということ
各社ともに怪獣以外の怪奇妖怪もの、戦争もの、SFものなどに方向転換を図っていったということ
あるいはこのジャンルから撤退していったということだ

東宝は70年代半ばまでゴジラシリーズを続けるのだが、なんとか他の路線に活路を見いだせないか努力をしている

東映は1本しかないが、この時期は特撮テレビシリーズを盛んに製作をしている
それが21世紀まで続く東映特撮の源流だ

大映はガメラシリーズを70年代までつづけるが、会社自体が倒産してしまう

日活もガッパ以降はなく、70年代はロマンポルノ路線となってしまう

松竹は結局上記の4作品で特撮映画はなくなってしまう
しかし、こうして整理してみると、松竹は意外と特撮映画をなんとかものに出来ないものかと挑戦しようとしていたのだとわかる

本作はギララを撮った二本松監督
今日の目からすればいくらでも突っ込みどころはある
けれども昆虫の群れの映像などはなかなかのものだと思う
ドラマパートも思いの外、ちゃんとしている

南の小島にあるバーカウンターのある小さなホテル
映画キーラーゴのホテルを思わせる

川津祐介のような第一線の俳優が出演している効果は大きい
新藤恵美も良かった
この二人は凡百の特撮映画とは一線を画す熱演をしている
音楽がウルトラQにかなり寄せたもので、雰囲気がある

昆虫の大群で人類の危機が迫るという同じテーマなら、1977年のエクソシスト2よりも昆虫の脅威をしっかりと映像に出来ている

結末もなかなかに強烈で良い
しかしそれ以上のものではない
松竹に特撮映画のジャンルを続けさせるだけのパワーはなかった

あき240