劇場公開日 1959年3月29日

「成瀬監督と橋本忍の脚本の社会派的題材だか後味は良い。」コタンの口笛 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0成瀬監督と橋本忍の脚本の社会派的題材だか後味は良い。

2020年4月24日
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鑑賞方法:映画館

成瀬監督作品では珍しい社会派的題材で、アイヌを題材にした文芸作品。

北海道の某所のアイヌ人部落に住む中学生姉弟が、学校で一部の同級生から差別を受けながらも頑張る姿を描く。

母が亡くなって父親は酒に溺れて貧乏な生活といじめっ子に「あ、犬」とか観光用の売り物と揶揄されたり教室で窃盗を疑われたりの日常と、それでも味方してくれる友人や教師達だか、アイヌへの差別を禁止する校長(名優の志村喬)も自分の息子にアイヌの娘を、頼まれると動揺してしまうなどやるせないが、姉弟は時に落ち込みながらも前向きに生きていく。

酒を断ち仕事も見つかり立ち直った父親の突然の事故死とやって来た親戚の非情な対応。

住み慣れた家と土地から去ってゆくラストだか、とにかく姉弟が気持ちも新たに希望を捨てないので、鑑賞感は悪くない。

主演の姉弟の俳優はあまり馴染みがないが、好演。

驚いたのは、怪優の左卜全が、アイヌ人で学校の用務員さんをいい感じに演じている。
いつも飛び道具的使い方が多い印象の役者だか、台詞も明朗で良かった。ちなみにこの人が歌う歌謡曲の「老人と子供のポルカ」で30万枚ぐらい売れた時代を映した名曲だと思う。

善人や味方役の時は、ともかく頼りになり安心させてくれる志村喬が出演しているが、それひっくり返してくるのは、当時の観客にアイヌ差別の根深さを分からせる装置になっていると思う。

これも名脚本家の橋本忍なので、見応えがあり、北海道ロケも結構効果的。

ミラーズ