劇場公開日 1955年7月26日

下郎の首のレビュー・感想・評価

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4.0どなたかお願いにござりまする。この手紙を読んでくださいませ。

2023年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

あらすじは、ネタバレのストーリー紹介の通り。
忠義一途の下郎が、主人の身勝手な裏切りにあったことを信じられぬ気持ちは、痛いほど伝わってきた。結局、主人の裏切りを知らずに身を差し出された下郎も、下郎を慕い一緒に殺された妾も、下郎如きに主を殺された門弟たちも、裏切りを悔い現場に駆け付けるも門弟たちに悪しざまに罵られる主人も、最後に幸せなものは一人もいない結末。
江戸時代、敵討ちの宿命を背負った武士がどれほどいたのかは知らないが、たしか、ほとんどはその本懐を遂げることはなく、その前に敵に巡り合うことさえ叶わず、旅路の空の下で野垂れ死ぬか、いつの間にか別の職人(大道芸とか職人とか)に身をやつして生涯を遂げるとかで、本国では忘れ去られていってしまうことが多かったと何かで読んだ。そうだろうなあ。この話のように、「敵を殺した」ことはできても、「討った」と言えず、ましてやその現場に立ち会ってもおらず、果たして「本懐を遂げました」と胸を張って報告することを躊躇ってしまうような事態に堕ちいったとき、この主人の絶望に近い感情は、こうして下郎を差し出してしまう行為によってなんとか自分の正義を保とうとしたのだろう。この主人は、もう立ち直れまい。病いが高じて、敵討ちを報告することなく、いやたぶんその気も失せて、この地蔵のそばで息絶えるんだろう。プラトニックを貫いてまるで心中のように死んでいった下郎と妾の二人は、見ようによっては幸せな最期だったのかもしれないな。なんだか、切なくて悲しいのに、心に残るのは涼しげな気分だ。

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栗太郎