「悪の血が騒ぐぜ。」黒の超特急 KIDOLOHKENさんの映画レビュー(感想・評価)
悪の血が騒ぐぜ。
のっけからめっちゃ面白い。まず、最初の土地売買の話。これ関係の詐欺がすげーいっぱいあるんで。もしかして・・っていうサスペンスになっていてグイグイ引きこまれた。それから、あっさり詐欺でわなかったことがわかり。その直後に何だった?ってのがわかる。そして、そこのところで株ですっからかんになる主人公を見せて。金が欲しい!というモチベーションを客に伝えた。ここのところの俳優の演技が見事だ。こういうところは力のない俳優がやると客を味方につけることができない。何しろ、金が欲しいだけで動く男に感情移入しろっていうんだから。金儲けたいんだ。っていう、ただそれだけのことで客を引き込めるのは、この田宮二郎という俳優に男にそういう悪の魅力が漂っているからであろう。それから。敵役の加東大介と悪のパンチをバシバシ打ち合う。本当はネタなど無いところからハッタリでかまして。それからネタを掴んでいく・・・女の後をつけるとこらへんの音楽の使いかたとか緊張感とサスペンス感があふれていてまったく飽きさせなかった。その後から女性の事情。女性の愛人、の事情。そのボスの事情と。事情説明の連続ではあるのだが。謎が解かれていく爽快感のようなものがあって、事情説明をされているとは全く気がつかない。そして、全てが明らかになった所でクライマックスに向かって行く。実に見事な映画だった。
この映画を見ていて、2人、いや、三人がが悪のパンチを打ちあうところがとても面白かった。もしかして。生来の真面目な人は、これを見ていて激しく嫌悪感を覚えるかもしれない。私が面白かったということは、私の中にも悪の血が脈々と流れていることかもしれない。この映画を監督した増村保造は東大卒業である。東大卒業の映画監督というと、頭でっかちな硬いものばかり作るという雰囲気が有るが、この監督はもうちょっと大衆よりで。悪の魅力を描くのが得意だ。もしかして映画監督にならなかったら、そういう道に入っていた人かもしれない・・などとふと思った。