雲霧仁左衛門のレビュー・感想・評価
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テレビドラマシリーズのパイロット版みたいな出来上がり
雲霧仁左衛門
1978年松竹カラー作品
原作はご存知池波正太郎
鬼平犯科帳が大人気となり、そのスピンオフのような内容の原作です
盗賊と火付け盗賊改役との闘いというのは鬼平と同じながら、時代設定が鬼平犯科帳より70年程昔に変わり本格の盗賊団の頭をメインに据えて盗賊団の動きを専ら描くところが違います
雲か霧のようにどこからともなく痕跡もなく忍びこみ大金を奪い去っていくから雲霧です
殺さず、犯さず、難儀するものから盗らずの掟はおなじ
鬼平は長谷川平蔵が正義のヒーローなら、こちらは雲霧仁左衛門が悪のヒーローというわけで本格の盗賊の手口の鮮やかさと火付け盗賊改の捜査のつばぜり合いのどちらにより焦点を当てるかの違いが鬼平との違いです
こらちらも鬼平に続いて人気作となったので映像化の企画がもちろん持ち上がります
鬼平は既に何度もテレビドラマ化されていました
ところが今回の企画はテレビドラマではなく映画化だったのです
原作の魅力は数多くの登場人物が織りなす物語にあるのですが、テレビドラマならともかく1本の映画でいきなりこの原作に手をつけると言うのは無理があります
観客が登場人物や設定を既にテレビドラマで毎回観ておなじみならば何かのエピソードだけに絞れば映画にはなるでしょう、しかし登場人物を1から説明していたなら映画にまとまらないと関係者は皆思ったことでしょう
監督はあの五社英雄ですから期待して観ただけにガッカリ感は強いです
しかも俳優座との提携作品だけあって素晴らしい役者ばかりの出演ですからなおさらです
五社英雄はこの当時フジテレビを干され独立して撮った映画も大当たりのあとが続かず行き場が無くなっていたそうです
そこにこの企画ですからなんとしても成功させねばとの思いは強かったはずと思います
なんとか映画にまとめてきったものの、監督自身がこれは映画にはならない、やはりテレビドラマならばと思ったに違いありません
テレビドラマシリーズのパイロット版みたいな出来上がりになっています
流石は五社監督と唸る良い演出も多数あるのですが、雲霧と火付け盗賊改との闘いを描くのか、雲霧仁左衛門の復讐譚を描くのか絞りきれず二兎を追っているためどちらも中途半端なのです
NHK BS 時代劇の雲霧仁左衛門の方が遥かに面白く楽しめます
そちらを強くお勧めします
とは言え本作もずっしりとした見応えはあります
原作者の意向を無視した原作改変の脚本が昨今大問題になりましたが、この頃は原作者の権威は物凄くその意向に少しでも背こうものならたちまち原作引き上げ製作中止、まして原作者は昭和の大作家池波正太郎ですから映画化するにあたり大幅な改変には及び腰になったのだと思われます
結果として内容も興業成績も震わ無い残念なものになりました
池波正太郎も問題はそこにあると気がついて次の闇の狩人では脚本家変更の注文をつけたそうです
しかしその問題は
結局解決されなかったのです
霧か雲の如く
雲も霧も掴み所が無い
五社英雄監督1978年の作品。
原作は池波正太郎。160分の長尺。超々豪華キャスト。
アクションも見応えもたっぷり。さぞかしボリューム満点の娯楽時代劇巨編と、ここ最近見ている五社セレクションの中でも楽しみにしていたんだけど…。
確かに娯楽巨編。
常連から新参。映画界に歌舞伎界。一発で覚えられないくらいの錚々たる面子。
彼らが織り成す愛憎劇。
アクションとエロスも織り交ぜ、これぞ大衆娯楽の極み。
良くも悪くも。
良く言えば上記の通り。
だけど何だか…。映画ならではの豪勢さやスケールではあるけど、贅沢なTV時代劇的でもあり、『魔界転生』『伊賀忍法帖』『里見八犬伝』といった往年の角川時代劇に通じるような匂いも…。
それに拍車をかけたのが、バイオレンスとエロス。
勢い凄まじい血飛沫や流血。その際の効果音がTV時代劇並み。時代劇に効果音を付けた先駆者の五社監督とは言え、ちと過剰気味。
エロスも濃厚な接吻、濡れ場、お○ぱいと、サービス精神旺盛なのか、エロ丸出しなのか…。
一応話は真面目に語られるのだが、もっとシリアスで重厚かと思ったら、ちょいちょいのチープさが見え隠れする。
話の方も何だかいまいち。
かつて武家社会に属していたが、無実の罪で追放され、盗賊となった男・雲霧仁左衛門。
その忠実な配下の者たち。
最後の大仕事を目論む…。
そんな彼らを追う火付盗賊改方の長官。
その一派の者たち。
彼らを取り巻く男たち、女たち…。
超々豪華キャストで魅せる交錯する人間模様は見物ではあるが…、
各々の派閥や思惑、目的などいまいち分かりにくい。
ドラマチックに語られてはいるが、今一つ伝わってこない。
何だか160分、超々豪華キャストの顔触れと大衆好みのものを、特にワクワクせず延々と見ていただけのような…。
自分には雲や霧を掴むような、掴み所の無い作品だった。
意外な展開のラストシーン
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