お遊さまのレビュー・感想・評価
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新派のような
自分が好きな「溝口映画」ではなかった。もちろん、結婚しなくてはいけない、自由な恋愛なんてとんでもなくて上流家庭では家が采配する、など若い男女が置かれている立場の不自由さは描かれていた。若葉の季節のお見合いのシーンや、葦が生えている琵琶湖(だろうか?)に舟が一艘、空には十五夜の満月という最後の映像は美しかった。 でもお話そのものは古くさいというか苛々した。田中絹代演じるお遊様は品良く美しくお琴の手も素晴らしく平安貴族ごっこができるほどの豊かな上流家庭に嫁いでいる。夫は亡くなったが小さい息子がいるのでそのまま嫁ぎ先で贅沢三昧の生活。ファム・ファタール的な役回りだが自分は無自覚な風でありつつ、かといって全く無自覚かというとそうでもない。言動に隙がありすぎで想像力が欠如していて人物像が破綻していた。だから途中から着物や和風建築のお家や検校さん呼んでの三味線・お琴・胡弓の月見の演奏会を愛でることにした。帯締は今よりずっと下のところで締めるんだなあ、などと思いながら。
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原作谷崎潤一郎、主演田中絹代の淑やかな文芸映画
原作が谷崎潤一郎という事で期待したが、文芸映画の淑やかな映像世界に特に感じるものが無く観終えてしまった。これまでの戦後作品の主演を全て任せてきた田中絹代の美しさに応えた溝口監督の個人的創作も想像してしまう。それが成功したとは思われない。上流階級の婦人を描くことが溝口監督の本流ではないとは言い切れない。前作「雪夫人絵図」のような分かり易い情緒的表現がなく、あくまで上品な映画として終始している。自分の鑑賞眼の限界を痛感する。 1978年 7月14日 フィルムセンター
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