「男はつらいよ紙風船」男はつらいよ 寅次郎紙風船 フーテンのケンさんの映画レビュー(感想・評価)
男はつらいよ紙風船
今回の話は奥が深くて素晴らしい。(10回は観てるが)
脚本としてシリーズ中評価高いですね。
まず、マドンナ音無美紀子はテキ屋稼業で寅のような男には慣れていてよく理解している。
そして、勝手に好きになって実は相手のいるマドンナということもない!
浅丘ルリ子や竹下景子いしだあゆみもそうだったが相手がヒョロっと出てくるマドンナはつまらないし寅が気の毒すぎる。観ている方もちょっと冷めるんです。
今回の音無美紀子はそんな中でもテキ屋の未亡人。リリーと似たような生き方だ。しかも気立てがよくて働き者男を立てる苦労人タイプ。
そんなマドンナが出てくるこの紙風船。
まずダブルマドンナでストーリー展開が今どきでは当たり前な手法だが、この時代ではよく練られている。
岸本加世子と音無美紀子という世代の違う立場とキャラクターの陰と陽のコントラストがおみごと。
岸本加世子は家出少女て天真爛漫。仲良くなれば抱きついてくるし、はしたない振る舞いも若い女らしいワチャワチャヤンキー娘によくいるタイプ。
音無美紀子は、影のあるワケアリ熟女(もう少し若々しさがあってもいいが)看護疲れとテキ屋で大変なので仕方ないか。
この二人が鉢合わせすることもなくストーリーが進むから落ち着いて観れる。(面倒くさいからね)
音無美紀子は寅のテキ屋仲間で死んだ夫の家を出て東京へ出てくるところから盛り上がる、知らせを受けた寅は会いに行く。とらやに食事に誘って急接近になるがだんだん素っ気なくなる…。
テキ屋の妻で苦労ばかりしてきた音無美紀子は東京の旅館で自立しながら前に進んでいる。
そんな彼女のこれからの人生を再びテキ屋稼業の自分が壊すわけにはいかねぇ!
真っ当な仕事をして世帯を持つことを夢見るがそれも難しいことはよくわかっていた寅はこれ以上彼女に迫らないと決めたのだろう。
ヤクザな寅がネクタイまで締めて面接試験に挑戦までさせたマドンナの魅力はシリーズ中秀作であるのだ!
あぁ男はつらいよ…。