「ボクの妻と結婚してください。」男はつらいよ 寅次郎紙風船 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボクの妻と結婚してください。
シリーズ28作目。
OPの夢は、ノーベル医学賞を受賞した寅次郎博士。が、世界の名医はノーベル賞より子供の命を選ぶ。その子供の母親は、かつての想い人であった…。
序盤の騒動は、
小学校の同窓会。偶々帰って来た寅さんは出席。
いじめっ子で不良だった為、小学校時代から超絶嫌われ者。そんな嫌われ者がやって来たのだから、後はご想像にお任せ。
べろんべろんに酔っ払って同級生に送って貰うが、散々悪態つく。同級生は涙ながらに言い返す。
寅さんの醜態は酷いが、少なからず同情も。周りは皆、真っ当に仕事し結婚しているのに、自分ただ一人だけ…。
旅先は、福岡。宿屋に泊まっていると、訳アリな若い女性・愛子と相部屋の頼みが。
別に寅さんは女性をどうこうしようって性格じゃない。相手が歳の離れた異性なら、懐深い保護者になる。
愛子も最初はガード堅かったものの、すっかり寅さんに懐く。グイグイな性格に寅さんもたじたじ。ひょんな事から暫く一緒に旅をする。
準マドンナ的な若かりし岸本加世子。やり取りが楽しい。
中盤、寅さんを追ってとらやに転がり込んできた愛子を連れ戻しに、長らくマグロ漁船に乗っていた兄がマグロを担いで怒鳴り込んでくる。荒々しく威勢がいいが、妹思い。出番は僅かだが、地井武男が印象的。これもまた、兄と妹の物語。
さて、本筋とマドンナは…
商売をしていると、一人の女が声を掛けてくる。
テキヤ仲間の女房で、光枝。音無美紀子がいい女っぷりを見せる。
話を聞くと、そのテキヤ仲間は病に伏しているという。
後日、見舞いに。
テキヤ仲間(演・小沢昭一)から、「俺が死んだら女房を貰ってくれ」と頼まれる。
安請け合いするが、後ひと月持たない事を光枝から知らされる。
程なくして、テキヤ仲間は亡くなり…。
光枝からハガキを貰い、東京で旅館の女中をしているという。
会いに行く寅さん。テキヤ仲間の例の話を真に受け、すっかりその気に。堅気の暮らしの相談や就職の面接を受けに行ったり(!)。
そんな時光枝から、例の話の事を触れられ、寅さんは…。
実に何度目か、堅気の暮らしや真っ当な仕事に就く機会。
合否の通知も届くも、結果は…。
結局また、夢幻を見ていただけ…。
思いの外、風情としみじみと、切なさや悲しさを滲ませる本作。
それでもラストは晴れ晴れとさせてくれる寅さんであった。