「美人の相が出ておる」男はつらいよ 噂の寅次郎 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
美人の相が出ておる
シリーズ22作目。
OPの夢は、
貧しい柴又村の娘(さくら)は寅地蔵に親切にする。やがて悪人に苦しめられていると、崇高な坊さんに姿を変えた寅地蔵が現れ、窮地を救い…。
…という、どっかの昔話で聞いたようなお話。
彼岸に墓参りするさくらたち。
するとそこに、寅さんが。
今回は和やかな里帰りと迎え。
…と、思っていたら、
タコ社長が帰って来ない!
何かあったんじゃないか…? ひょっとして、仕事を苦に自殺でも…?
いつも喧嘩ばかりしてるけど、心配する寅さん。
そこへ陽気に帰ってきたタコ社長。仕事仲間に連れられ、ちょいと遠出して、飲み遊んでいたという。
心配掛けやがって!…と、寅さん。
憂さ晴らしして何が悪い!…と、タコ社長。
またまた大喧嘩。
旅先は信州。
橋の上ですれ違い様、坊さんに「女難の相が出ておる」と忠告を受ける。
大滝秀治もシリーズにチョイ役で度々出演しているが、本作でのこのシーンが一番印象的。
早速(?)訳アリそうな若い女と出会う。
男関係で裏切られ、愚痴を聞き、慰める。
演じるは、若き日の泉ピン子!
ご安心を。何もピン子が“女難の相”や今回のマドンナではない。
旅で思わぬ人物と偶然再会。
シリーズ8作目以来、これが3度目の登場となる、志村喬演じる博の父。
博の父と言えば、真面目で面白味の無い堅物だが、全く正反対の寅さんを非常に気に入っており、寅さんに影響を与える。今回も然り。
今昔物語からある話を聞かせる。
ある男が絶世の美女と出会って結ばれるも、一年も経たずして女は病死。忘れられない男はもう一度女の顔を見たくて棺を開けるが、腐乱していて…。
人生の無情や儚さを謳った話。
身に染み、とらやに帰って皆にこの話を聞かせるのだが、何故か寅さんが話すと怪談に(笑)
その頃とらやでは、お手伝いさんを雇う。
やって来たのは、誰もが思わず見惚れてしまうほどの美人さん!
今回のマドンナ・早苗。演じるは、大原麗子。
歴代マドンナと言えば、浅丘ルリ子や吉永小百合や後藤久美子が有名だが、個人的には大原麗子も印象的。何故なら、
とにかく美人! 色っぽい!
タコ社長に博、おいちゃんまで色めき立つほど。
「寅さんと会えて嬉しい」「寅さんの事、好きよ」…ちょっとその気があるのか、ナチュラルなのか。
寅さんでなくともメロメロ惚れるのも当然。
美人には訳アリが付き物。夫と別居中。
本作が好評で、後に別役でもう一度マドンナとして登場。
寅さんのマドンナにぴったりの人選。
なので、数年前に訃報を聞いた時、孤独死はショックだった…。
美人マドンナに惚れているのは寅さんだけじゃない。
彼女の従兄。
幼い頃から想いを秘め、常に気遣う。
東映のヤクザ映画やアクション映画の悪役で有名な室田日出男が無骨な男を好演。
従兄の心底の想い。
改めて早苗はその想いを知って…。
二人の秘めたる想いを知って、寅さんは…。
寅さんの恋路はいつもながら、“コンニャク物語”に博の父の再登場、
何より美人マドンナ・大原麗子だけでも一見の価値アリ。