劇場公開日 1952年10月1日

「お茶漬けの味のような映画」お茶漬の味 pekeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5お茶漬けの味のような映画

2024年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

【生誕100年記念】映画女優 淡島千景特集で鑑賞(フィルム上映)。

とても面白かった。
ユーモアがあり、健康的で、おおらかで、チャーミングな映画。そして、淡島千景さんもとても素敵だった(傷だらけのフィルムだし、すごいノイズでセリフが聴きとりにくいところがいくつもあったのは残念だったけれど)。

いつものごとく、本当になんてことのない話を名作にしちゃうんだから、さすが小津監督、すごいなぁ。
なにも特別な話でなくてもいい。映画って、これでいいのだ、じゅうぶんなのだと思ってしまう。
夫婦関係の妙を、生涯独身で通した小津が描く。いや、独身だったからこそ、冷静にそれが描けたのかもしれないな。

さらにいえば、ストーリーを描くのではなく、人間を描くこと。要は人間をしっかりと描くこと。
逆をいうと、人間を描けていない映画はストーリーがどんなに面白くてもダメなのかもしれないな。

腹が減ったときに食うメシは、御馳走でなくても美味い。
この映画じたいが、日常のささやかなしあわせを感じながら食べる、そんなお茶漬けのよう味わいの作品でした。

それにしても茂吉のように、ものわかりの良い、鷹揚なダンナさんも滅多にいないでしょうね。

追記
なんで「ALLTIME BEST」に選ばれてないのかな?

peke