沖縄やくざ戦争のレビュー・感想・評価
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「戦争、だァい好き」 本土のヤクザを琉球空手の型で威嚇するウチナーンチュ千葉ちゃんの破壊力!!
新文芸坐の「追悼・千葉真一」にて、『仁義なき戦い 広島死闘編』と併映で視聴。
僕にとって、千葉ちゃんは特別なスターだ。
小学生のころ、戦隊ものやアニメへの興味を次第に喪ったあと、もっぱら時代劇と刑事もの(とくに「必殺」と「影の軍団」と「特捜最前線」)にまみれて育った僕にとって、千葉ちゃん(と沖雅也)は小・中通しての絶対的なヒーローだった。
遅れてきたファンだったあの頃の僕にとって、千葉ちゃんは「キイハンター」の人ではなく、柳生十兵衛であり、服部半蔵であった。
長じて大学生になると、「殺人拳」シリーズや一連の空手映画にも夢中になり、浅草や川崎に当時あった、たばこの喫える浮浪者臭い名画座に足しげく通ったものだった。
成人後、職場の上司が昔運営にかかわっていた縁で、東京ファンタの後夜祭にもぐりこませてもらったのだが、そこに白のタキシードを着た千葉ちゃんがマイク真木と遊びにきて、あれが実物の千葉ちゃんを拝した最初で最後だった。やおら即席サイン会が始まって、猛烈に緊張しながら列に並んだのだが、僕の数人前で唐突に打ち切りになってしまった。二人が手を振りながら帰って行ったのを、苦くも懐かしく思い出す。
あらためて、心からの追悼の念を捧げます。千葉ちゃん、大好きでした。
* *
千葉ちゃんのフィルモグラフィのなかでも、『仁義なき戦い 広島死闘編』の大友勝利と『沖縄やくざ戦争』の国頭正剛は、超攻撃的なぶっ飛んだヤクザとして異彩を放っている。
とはいえ、大友が千葉ちゃんのそれまでの個性を「抑える」方向で、「体術」も「眼力」も「封印」して臨んだキャラであるのに対して、『沖縄やくざ戦争』の国頭は、まさに千葉ちゃんのキャラ丸出しで、陽性の魅力と併存する狂気と凄みを惜しみなく発揮した「千葉ちゃんのための役柄」だといえる。
実際いるよね、こういう経営者とか。
異常に攻撃的で直情的なんだけど、異様に人間くさくて人懐っこくて、圧倒的なカリスマ性があって、一部に熱狂的なシンパと子分がいるっていう。
作り物の作品のなかでは、猛烈に魅力的だけど、まかり間違っても仕事先とか上司とかにはいてほしくないタイプ。
国頭正剛は、「破天荒リーダー」の究極的存在だ。
なんせ本土から観光に来たヤクザが姉ちゃんバーで気持ちよく旅姿三人男を歌ってたら、千葉ちゃんいきなり「三線弾けい」って机に無重力みたいに乗っかって、琉球空手の型ガンガン始めて威嚇しだすんだよ? やーん、ケダモノw
しかも、本土から来たヤクザってだけで、ホテルの前までつけて車ではね飛ばしたあげく、二度轢き、三度轢きするっていう(笑)。 控えめにいっても頭がおかしい。
「戦争、だァい好き」
「俺達は何十万のアメリカ軍と本当の戦争やったじゃねえか」
足の裏をぼりぼり搔きながら国頭が言い放つ、名セリフ中の名セリフ。
彼は、沖縄返還前年という年になってなお、ヤマトへの敵愾心を隠すこともない。
彼は狂ってはいても、まっすぐに沖縄を愛し、沖縄の独立を信じる憂国の士なのだ。
だが彼は、ヤマトの息がかかってるというだけで、居酒屋に凸して、破壊の限りを尽くす。
神戸のヤクザとの抗争も辞さない。というか、やりたくてうずうずしている。
少しシマの外に出張って商売してた室田日出男を捕まえて、拷問のうえ去勢する。
うん、やっぱり、頭がおかしい。
「たっくるせー、たっくるせー、たっくるせー」
(殺せー、殺せー、殺せー)
チンコをもがれて、顔色までゾンビみたいに変色してしまった復讐鬼・室田日出男が、ぶつぶつとお経のように唱える呪詛の言葉だ。
そう、行き過ぎた暴力は、多方面の恨みを買って、かならず本人に帰ってくる。
国頭暗殺シーンもまた、千葉ちゃんの極限的な身体能力が発揮された名場面だ。
千葉ちゃん、ありえないような体さばきで動いてたよなあ。
死ぬ直前に、三点倒立みたいなことやってたし(笑)
あと襲撃時に歌ってたのが、「PW無情」ってのも、コンテクストとして素晴らしい。
もう一人、異彩を放っているのが、インテリヤクザを演じる地井武男。
西部警察とちい散歩のイメージしかない人間が観たらひっくり返るような、長谷川博己か姜尚中みたいな風貌で、策謀家でブライドの高い側近の役を、実に小粋に演じていた。
いやあ、かっこよかった、マジで。
話自体は、中島貞夫監督作の常として、かなりチープでいい加減だ。
深作欣二の実録ものあたりと比べると、画格として大分見劣りする。
終盤も風呂敷を広げすぎて、コマンドーみたいになってて、やりすぎ感がある。
とはいえ、織本順吉・成田三樹夫の親分コンビは最高だし、「性獣」渡瀬恒彦の存在感も抜群。もちろん松方弘樹もしっかり主役を張っている。
充分に面白いヤクザ映画であった。
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