大江山酒天童子のレビュー・感想・評価
全2件を表示
【酒呑童子伝説を、本来の関白・藤原道長の圧政に対抗する男達として正統的に描いた時代劇。】
■平安末期。
源頼光は、時の関白・藤原道長が寵愛する渚の前を下賜された。実は彼女は妖怪に狙われていて、頼光のもとに来てからも妖怪の襲来を受ける。
頼光は部下である四天王と共に、大江山を根城にする妖怪の首領・酒天童子を討つ決意をする。
◆感想
・一般的には、酒呑童子伝説は民を苦しめる百鬼夜行の頭として酒呑童子を描くパターンが(一般受けをするので)多いが、本来は関白・藤原道長の圧政に対抗する男達、いわゆる日本の梁山泊という位置づけではなかったかと思うのである。
・今作は、そこがキチンと描かれており、藤原道長が寵愛する渚の前は実は酒天童子の愛妻であり、道長に美しさ故に無理やり連れていかれていたとみれば、今作の観方も変わって来るであろう。
・故に、最後半、源頼光と対峙した酒呑童子が”これからは、源の世の中になる。故に酒呑童子は解散じゃ!”と言って、亡き妻を偲びつつ一人馬を駆って、何処かに消えるラストシーンが、哀切乍らナカナカなのである。
・劇中に現れる大蜘蛛や、牛の化け物や、妖怪茨木童子たちも、実際には圧政に苦しんだモノ達と観れば、コレマタも観方が変わるであろう。
<今作は、酒呑童子伝説を、本来の関白・藤原道長の圧政に対抗する男達として正統的に描いた時代劇なのである。>
新解釈・酒呑童子にして元祖・鬼滅の刃!?
Amazonプライム・ビデオで鑑賞。
長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、本郷功二郎と云った大映の看板俳優ががずらりと顔を揃えたオールスター超大作。
長谷川一夫が酒呑童子役。タイトル・ロールでありますが、中盤にならないと登場しないし、出演シーンもそう多くはないので、実質の主人公は市川雷蔵演じる源頼光でしょう。
この頼光一行、朝廷より京の都の守護を仰せつかっておりますが、伝説を紐解くと妖怪変化の類との戦いが多い…。今で云うところのゴーストハンターみたいなものでしょうか? 否、元祖“鬼殺隊”と云った方が良いでしょうか?(笑)
酒呑童子の伝承を詳しくは知らないですが、物語の一部に橋姫伝説からの引用も見受けられ、頼光一行が活躍した伝説の集成のような感じで脚本が書かれたのかも…。
冒頭で酒呑童子伝説の概要を紹介した後、本編がスタートしました。やかて本作は「その伝説、実はこうだったのではないか?」と云うスタンスで描かれた「新解釈・酒呑童子」だと云うことが分かるのですが…。その新解釈、もとい改変は、大スター・長谷川一夫を殺すわけにはいかないと云う事情から生まれた苦肉の策のように思えていまいちピンと来ませんでした。
超大作なだけあって、キャストのみならず何もかもが豪華絢爛。平安時代の雅な装束やクライマックスの戦闘など、大映の総力が傾注されたであろう画づくりが素晴らしい限りでした。
全2件を表示