劇場公開日 1966年3月12日

「どんな時代でも男と女の間には黒い川が流れ」"エロ事師たち"より 人類学入門 はるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どんな時代でも男と女の間には黒い川が流れ

2021年8月15日
PCから投稿

こんな職業が存在したことじたいがうれしい。
"エロ事師"と呼ぶことじたいに人間らしさが感じられる。
いつの間にか、どうしたことかこの手の商売は産業と呼ばれてしまっていて哀切さがなくなってしまった。つまり人間が感じられなくなってしまった。スブやんはくそ真面目に正直に世間を生き抜いていて、職業の貴賤など笑い飛ばしながら悔し紛れの働くことの正当性を誇示して暴力にも屈するこ
とはない。しかし、周りからは蔑まれ疎まれる。が、しかし、めげないし挫けない。足を洗うことなど考えもしない。男の悲哀を知り抜いているが故の信念なのだ。高度成長期の真っただ中で、人間らしく生き抜くためには何をすれば良いかを教えてくれている。
この映画が描いている時代と今の状況はなんら変わることがない。
社会は効率的で経済最優先である事が人間を幸せにする。それ以外の考えは無意味だと信じて疑わない。この映画が作られた時代にすでに、他の考えもあるだろうと言っている。
この映画が封切られて55年が過ぎてしまった。
メンドクサイけれど新しい生き方をも認め、生きる方法を始めてみたいものだ。

はる