「異邦人の苦悩」海燕ジョーの奇跡 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
異邦人の苦悩
藤田藤八作品はこれと『八月の濡れた砂』くらいしかまともに見たことがないけど、アメリカンニューシネマ的な反抗心と破滅美を演出するのが上手いな〜という印象。
沖縄という日本的アイデンティティの辺境からもついに追い出されたジョーが自身のもう半分の血のルーツであるフィリピンに向かうのは必然だ。フィリピンでの生活に徐々に慣れていくジョーだったが、最終的には死という破綻をきたす。
フィリピン軍の戦車に突っ込んで死ぬラストシーンはさながら『バニシング・ポイント』を彷彿とさせた。
どこへ行っても異邦人であるという「混血」の疎外感と絶望が、藤田藤八らしい衝動的なタッチで力強く描かれていた。
深作欣二『やくざの墓場 くちなしの花』もそうだが、昭和の日本映画で正面切って在日の人々の苦悩を描いた作品というのはそれだけで稀有だし価値がある。
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