「クソ真面目新人警官ネスターが娼婦イルマと出会い変様していく様を描く」あなただけ今晩は 葵須さんの映画レビュー(感想・評価)
クソ真面目新人警官ネスターが娼婦イルマと出会い変様していく様を描く
ラブコメディの作品は自分は好き好んで見た事は無いが試しに視聴。内容の感想ではない話だが、パッケージの主役ネスターとイルマの絵や、DVDで見ることができるオリジナル予告編の切り絵アニメどちらもおしゃれで芸術の都パリ(の娼婦街ではあるが)を主題にしただけはあると感じた。また、本作の前に同じ監督と主役二人で作られた『アパートの鍵貸します』という作品も当時(1960年代)流行ったらしいので、見る機会があれば見てみたい。
率直な感想は、悪くないという程度。ストーリーはイルマを自分だけのものにしたいネスターが、娼婦としての仕事をやめてもらうために悪戦苦闘し、その間に手段と目的が逆転してしまい心のすれ違いと仲直りがあるという形。その中でネスターがクソ真面目な警官から娼婦のヒモ、果ては裏で自分の女の為に肉体労働し変装して貢ぐという状況になる代わりようが細かく描かれていて、恋愛要素やイルマの描写は表層的に過ぎないものに感じた。またコメディー要素は物語序盤はそれなりにあったが物語終盤になるにつれて意図して笑いを作る様相はあまり感じなかった。これらによりパッケージでラブコメディとあるこの作品の本質は娼婦に入れ込んだ男の末路という一言で言えそうだと思う。
最後に、この作品ではヒモが娼婦の客を嫉妬で殺すことを『愛』としてイルマもそれを肯定的に捉えている表現がされているが、日本人である自分の価値観とのズレをそこに感じた。フランスではそんな価値観があるのかな?と疑問だ。もう2つ。最後にネスターが警官に戻るよう勧誘されているが、人殺しをしたとされ、脱獄をした男を勧誘するのは常識的におかしくないか?と思った。そして最後の最後でX卿がいるとして描写することを持ってエンディングとしたのは物語の本筋から視聴者の意識をそらしてしまうしその謎に物語へ付加価値を与える事は無いと思ったので無駄な描写ではないかと思った(三谷幸喜はこの作品が好きらしい。分かる人には分かる価値があるのだろう)。