劇場公開日 1971年9月11日

「深川梁山泊」いのちぼうにふろう 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0深川梁山泊

2024年9月22日
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鑑賞方法:映画館

DVDを持っているのだが、映画館で観られる機会もなかなかないと思い…。
相模川の中州に建てたという安楽亭のオープンセットが実質主役と言っていい。川の水が溢れてきたり、周りの葦が駄目になったり、いろいろ大変だったらしいが、抜け荷稼業のならず者たちの巣窟のイメージを見事に現出していた。
仲代達矢は小林正樹監督作全22本のうち10本に出演しているそうで、長きに渡る俳優生活の中で自身の代表作は「切腹」だと公言している(私の日本映画ベスト1でもある)。実年齢より20歳上の浪人を演じた同作に比べると、この映画の役はずっとギラギラしている。小林監督のフィルモグラフィーで言えば、「黒い河」の“人斬りジョー”に近い。ハードボイルドなのだが、溺れた雀を助けたり、転がり込んできた奉公人に憐憫の情を見せたりする面もある。そこが弱みでもある。
舞台がほぼ安楽亭とその周辺に限られているため(なので舞台化もされている)、若干閉塞感がある。「切腹」の護持院ヶ原の決闘のようなスペクタクル場面に欠けるのが惜しい。
この頃の栗原小巻の美しさは際立っている。監督もわざわざ「栗原さん、ほんとうにきれいでしたねえ」と述懐している。

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梨剥く侍