悪名(1961)のレビュー・感想・評価
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河内弁こそが主人公です
関西弁と一口にいっても実は色々あります
大阪中心部の方言は船場言葉です
本当の大阪弁である船場の言葉で話す人は現代ではごくごく稀になってしまいました
市外に出ると方面毎に言葉が違います
東は河内弁、奈良弁、
西は播州弁
南は泉州弁、和歌山弁
北は京都弁、
だいたいこのように大別されます
この中で一番汚い言葉の代表格が河内弁です
現代のテレビでお笑い芸人が話す言葉は、だいたい河内弁をベースにして、奈良弁とか泉州弁とか播州弁とかの言葉が入り混じった言葉です
まあ、今ではかなり薄まってしまってマイルドになっていますし、テレビで全国に長年この汚い言葉が流されている内に慣れてしまっています
だから初めて本作でこの河内弁を聴いた全国の人々の衝撃は想像に難くありません
本作の主人公は実はこの河内弁です
本当の大阪弁を話す人からしたら、本作の言葉は眉をしかめるような強烈に汚い言葉の羅列です
東京の山の手の人が下町のべらんめえ言葉を聴く程度ではなく、その四五倍以上の落差があると思って下さい
大昔は露骨に嫌な顔をしていました
江戸時代でも淀川を京に上る大舟に、中流の北河内辺りで煮物などを売りつけに近寄る小舟にのる物売りたちの喰らわんか!という呼び込みの言葉のあまりの口汚さに閉口したという話が有名で広重の浮世絵の題材になっているくらいです
この汚い言葉が縦横無尽に飛び交います
東京生まれの勝新太郎が自在にほぼネイティブな河内弁を操っています
これで本作は成功したも同然です
大阪生まれの田宮次郎も当然自然な河内弁でした
この汚い言葉の強烈なインパクト
しかし活き活きとした生命感、人間の躍動感が生で表出しているのです
それはほぼため口だけの方言であるからかもしれません
本シリーズの河内弁が60年代の日本全国を風靡していたのです
それは70年代の仁義なき戦いの広島弁にも匹敵するものだったのです
もちろん勝新太郎の得難いキャラクターが爆発しています
田宮二郎も素晴らしい存在感です
中村玉緒も輝いています
ラスボスの浪花千恵子の迫力もインパクトあります!
映画史に残るような立派な映画では無いですが、なるほど長いシリーズに成長するのも納得の面白さです
脚本は依田義賢、撮影は宮川一夫、音楽は伊福部昭と錚々たるビッグネームばかりでびびります
原作の今東光だってただの河内のど真ん中八尾の寺坊主じゃありません
彼は32歳で出家する前は東京で川端康成と文学活動をしていた文筆家なのです
若き勝新のスター性よ!
1961年大映作。これが評判になり長いシリーズに。
昭和初期を舞台にした義理人情&バディムービー。河内弁で喋りまくり。死語的な言い回しが多くまるで別世界の物語のよう。だが見て行くうちにこの世界のグルーヴにやられる。
とにかく勝新太郎の魅力が凄い。ぷっくらとしたルックスに真っ直ぐ過ぎる性格。その上はったりのかまし方が半端無い。まさに肝っ玉の太いヤツを体現しておる。しかも優しい。女性にモテるのも納得だ。いや男も惚れる。田宮二郎がついていくのもよくわかる。中村玉緒が出てきたシーンでは画面がホッコリしましたね。
サクサク進み退屈する暇はなく、展開も読めないで楽しめた。現代とかなり価値観が違う世界を見られた。ラストシーンも見事。
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