ある愛の風景のレビュー・感想・評価
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心の闇を啓く愛。
これも名画座にて。
デンマーク・アカデミー賞で最優秀主演女優賞を獲得し、
ハリウッドでのリメイク企画も進行している作品だそうだ。
題名を見るだけでは、ちょっと分かり辛いその内容は、
悲しみと孤独に家族の絆が入り混じり、痛みと切なさの反復、
これでもかこれでもかと「夫婦」の在り方を見せつけてくる。
確かに女性監督(S・ビア)らしい繊細なタッチではあるが、
戦渦のアフガニスタンの描き方は想像以上に恐ろしかった。。
これは、誰にでも起こり得る話だと思う。
国連軍として戦地に赴いた最愛の夫が戦死したという訃報が
突然届き、家族はその悲しみに打ちひしがれている。。
両親には自慢の息子、妻や子供には素晴らしい夫で父だった。
まさか。。どうして。。
しかしその悲しみは、やがて時間が癒してくれるようになる。
夫には弟がいた。出来損ないだった弟が兄の戦死以降、
その罪を詫びるかのように、遺された家族に尽くし始める。。
初めは怖がっていた子供達も彼になつき、妻もだんだんと
彼に惹かれ始めていく。そんな矢先、夫の生存が分かり、、。
物語のクライマックスは、ここから。
当然家族は大喜びし、すぐに夫を迎え入れる。むろん弟も。
そして普段通りの生活が(形式的に)始まっていくのだが…。
夫はもう、以前の夫ではなかった。戦地で何があったのか。
観客にはすでにそれが分かっているが、家族は何も知らない。
愛する家族のもとへ生きて還るために、彼は何をしたのか。
正義感溢れる誠実な人間だからこそ、抱えてしまう心の闇。
父親に怯え始めた子供達のため、妻がとった行動とは。。。
実は、不倫映画か…?なんて最初はたかをくくっていた。
夫のいない間に弟と?っていう、そういう「愛」なのかと。
ぜんぜん違っていた。恥ずかしいほど不正解だった(汗)
これぞ夫婦だ。さすが…!
ラストはそう思わずにいられなかった。
どんなに愛している相手でも、見えないものは見えない。
分からないものは分からないのだ。当たり前のことだx
なにか重大なことが起きて初めて、対峙するときがくる。
そしてそれを打開できる力こそが、夫婦の「対話」なのだ。
(弟もいい青年だった。原題が示すように兄弟の絆も◎)
しあわせになることとは
「しあわせな孤独」のスサンネ・ビア監督。
彼女はしあわせについて深く探っている気がする。
この映画は主人公のミカエルが戦地で捕虜になり、ともに捕虜になり、互いに家族に会うまでは頑張ろうと励ましあっていた男を、自分が生き残るために殺してしまう。
ミカエルは家族の元に戻ってから、殺した男とその家族を不幸にして取り戻した幸せの罪悪感にさいなまれる。
人の不幸の上にある幸せは幸せと言えるのだろうか?
宮沢賢治の「しあわせとは?」という問いを思い出す。
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