「深く重く迫り来る」ある愛の風景 シンコさんの映画レビュー(感想・評価)
深く重く迫り来る
優秀な兵士である兄・ミカエルと、その妻・サラ、そして刑務所帰りの弟・ヤニックの人間模様です。
ミカエルはアフガニスタンに拘禁され、生きて再びサラと会うために、人間として最も酷烈な罪を犯してしまいます。
凄まじい葛藤のシーンに、息が詰まります。
殺伐とした砂漠の中での幽閉生活と、罪業への呵責によって、ミカエルの精神は蝕まれてしまいました。
心はすさみ、サラとヤニックがベッドを共にしたのではないかと疑心暗鬼に駆られます。
数奇な出来事をくぐり抜けてきたために、不幸にも背負ってしまった苦悩に胸が痛みました。
何故人間は苦しみ、傷つけ合わなければならないのか?
この映画は、同じくスサンネ・ビア監督の作品「アフター・ウェディング」とは違って、問題の解決を示していません。
しかし、希望を暗示するラストシーン。
苦悩を分かち合うことによって、初めて問題は解きほぐれていくでしょう。
リアルに、繊細に、丹念なエピソードを重ねていき、物言うクローズアップを多用しています。
大向こうを唸らせるような演出は思い切りカットして、人間ドラマを容赦なく描き出すスサンネ監督の手腕。
重く、深く、胸に迫り来る映画です。
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