リーピングのレビュー・感想・評価
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あなたは奇跡を信じますかぁ?
アカデミー賞女優のヒラリー・スワンクがB級ホラーに主演?などと驚く方も多いだろう。しかし、元々映画デビューがヴァンパイア映画だった彼女は今後もまたヴァンパイア映画に出演するのです。多分、自身もホラー好きなのだと思わせるほどのヒラリー・スワンク。彼女の熱演のおかげで、かなり奥が深い旧約聖書の“10の災い”を楽しめるし、宗教や信仰心、ひょっとすると悲しみを背負った人間の生き様に感銘を受けることもあるかもしれない。
主人公キャサリン(スワンク)は元宣教師だったが、アフリカで布教活動していた時期に娘と夫を亡くしてしまう。そんな彼女は信仰心を捨て、“奇跡”を信じないどころか、その事象を科学的に解明する科学者となっていた。そこへアメリカ南部の小さな町“ヘイヴン”で川が血のような真っ赤な色に染まってしまったという異変の調査を依頼される。調査を開始すると、川が血で染まったのは第一の災いであり、旧約聖書の“10の災い”にそっくりな展開になっていくというプロットだ。
宗教を捨てたキャサリンにとっては“10の災い”も全て科学で証明できるのだと、早口で相棒ベンに解説するシーンが印象的。有名な出エジプト記の10の第一の災いは、大量の藻のおかげで微生物が発生して赤潮のように水が赤くなった・・・カエル、ブヨ、アブ、家畜の疫病、と全て科学的に説明がつくのだと・・・早口すぎて覚え切れません。そういえば、カエルの大群が落ちてくるなんて『マグノリア』以来。イナゴの大群は色んな映画に出ていますけど、旧約聖書をモチーフにしていたものが多かったのかもしれませんね。ようやく理解できました。
キャサリンが転んで頭を打ったり、寝ているときに、現実なのか夢なのかわからないほどのフラッシュ映像が挿入され、アフリカに飛んだり、町で不吉な少女とされているローレンに出会ったりと目まぐるしく移り変わります。『エクソシスト2』でも似たような映像表現がありましたが、この映画ではとにかく特殊効果が凄い。どうやって撮っているんだろう?などと一瞬でも考え込んだら頭がパニックになりかねません。感心しているとストーリーはどうでもよくなってくるほどです。ダークキャッスルも金が有り余っているのか、とにかく映像にはビックリです・・・
陳腐な部分も多い映画でしたが、ほとんど浮いていた状態のスティーヴン・レイ。ヒラリー・スワンクに危機が迫っていると連絡をくれたりするのですが、彼だけ映画の別次元に存在していたかのようで痛かったです。そんな中でも拾い物だったのが、少女ローレンを演じたアンナソフィア・ロブ。『チャーリーとチョコレート工場』にバイオレット役で出演していた娘なのです。ほとんど喋りませんが、怖い顔とやさしい顔、色んな表情で演技できる存在感のある子役でした。
【2007年5月映画館にて】
キャリーとは異なる侵食する恐怖
『リーピング』気になっていたので観てみました。
最初の第一の災いである赤い川からグイグイとストーリーに引っ張られます。今作のキーパーソンである謎の少女のローレン(アナソフィア・ロブ)、主人公の無神論者で、科学者のキャサリン・ウィンター(ヒラリー・スワンク)、キャサリンの助手のベン(イドリス・エルバ)がヘイブンという小さな町に出向き、その調査に向かう・・・というのが大筋の流れです。
実はこのストーリー、終盤に伏線が大量に回収されていく様は見事。よくセリフ一つ一つに眼を凝らしていれば、誰がサタンか分かるようになっています。
それと、イドリス・エルバは私の好きな俳優なので、出てきた時は嬉しかったです。ゲイリー・オールドマンと同じで、味方でいると少し、安心して観れました。ローレン役のアナソフィア・ロブは非常に可愛らしく、美しい少女で、どこかで見た顔だなと思ったら『チャーリーとチョコレート工場』に出ていたヴァイオレット・ボーレガードを後から知り、ビックリ。
物語終盤ではローレンはサタンの子と判明するが、鑑賞中、ローレンの可愛いさのあまりにローレン側につきました 。出エジプトの十の災いに沿って製作しているため、同じ旧約聖書の『キャリー』や『プリズナーズ』とは違った雰囲気でした。サタンが出てくるのはプリズナーズも同じですが、リーピングではサタンの存在が全面的に押し出されているのでホラーよりもオカルトや邪悪の印象を受けました。
ただ最後の展開は『サイレントヒル(2006)』、『キャリー』に近い形で、ヘイブンの住人がカルト教の信者で、今まで信じてきた人物に裏切られ、実は敵だと思っていた人物が・・・という同年に公開されたサイレントヒルを思い出す内容。今作の最大の見せ場である、第七の災いのイナゴの大群が押し寄せるシーンはいくらCGでも、精巧に作られたアナゴも大群は気持ち悪くなる方がいるかもしれません。第十の災いを見ると、イナゴが少しマシに見えるぐらい強烈ですが、ローレンの人外染みた存在と神秘的な雰囲気は、他の作品にはない良さです。
キャリーでも、アレッサ・ギレスピーでもない
一人の少女として、物語が完結する。後味はよくある続編フラグを匂わせて終わりますが、続編があれば是非見てみたいです。ローレンのためなら、私はローレンの味方につきます。それぐらい、観終わった後のローレンは別人に見える。非常に面白く、悲しい映画でした。
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