フランシスコの2人の息子のレビュー・感想・評価
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セルタネージョの希望の星
ブラジル音楽と言えばサンバやボサノバと思っていたらセルタネージョという歌謡曲のようなカントリーミュージックも人気が高いと知って勉強になった。
息子を歌手にさせたいのは父親の夢、歌の世界で一発逆転、子供たちには小作人の惨めな暮らしはさせたくないという悲願だった。ところが楽器は工面するも音楽知識はまるでなく鶏の鳴き声に惹かれて子供に生卵を飲ませるエピソードも実話と言うから苦笑せざるをえない、息子の出来が良かったのは幸いだった。
貧乏人の子だくさんというが7人もの子宝に恵まれたのは良いが子育ての苦労は並大抵ではない。不幸続きの人生でもたまに幸運の女神が微笑むことがありそのチャンスを掴めるかどうかはやはり日頃の努力なのだろう。
本国では大ヒットした映画、ゼゼ・ヂ・カマルゴ&ルシアーノが成功を収めた人気歌手というのは殆どのブラジル人は知っているだろうから苦労の過程も希望の星として共感して観ていられるのだろう、知らない身としては途中切ない思いばかりさせられて疲労困憊してしまった。
出だしからイイ空気。後半は!?
よかったです。特に前半部分。
(以下途中までの軽いネタバレです)
出だしの大歓声から転換して広がる抜けるような青空…。乾いた空気…。
初めて我が家にやってきたラジオから流れるカントリーに満面の笑みで釘付けのフランシスコ。
ブラジルの片田舎。自然に囲まれた小さな家でにつつましく暮らす生活。
ラジオが来てからというもの家の中にはいつも音楽が流れ、次々と誕生していく我が子たちは
生まれた時から音楽と共に育っていきます。その数総勢7人!すっかり大家族です。
フランシスコは周囲にイカレてると言われながらも
とあるキッカケから長男と次男に私財を叩いて楽器を買い与え、
なんとか子供達に音楽で身を立てさせようと奮闘します。
これも貧しい自分たちの暮らしから抜け出せるようにとの親心…。
当の本人たちがどこまで乗り気だったのかは微妙なところですが
目を見張る勢いで着実に上達していく2人。
ところが、身内の地主から地代の滞納をとがめられ
一家はとうとう立ち退きを迫られる事態に。
移り住んだ新たな街であばら家に入る一家。
降りしきる雨。荒れた街並。いわゆるスラム街でしょうか。
やりきれない思いに密かに涙する母親を見て兄弟は2人で家を後にします。
向かった先は人々の行きかうターミナル駅。
2人は雑踏の中でアコーディオン1つで歌い始めます。
♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪
澄んだ歌声と美しいハーモニー…
文句なしに素晴らしい!
足元に置いた空箱には見る見るお金が貯まっていきます。
笑顔で顔を見合わせて歌う二人。観ているコッチも当然笑顔です。
このあと少年たちはちょっとしたチャンスを掴んで旅に出るのですが、
その足がカラシ色のワーゲントラックだったり
行く先々の街が古き良きいい味をかもし出していたり
南米の大地をひた走る広大な風景だったり。
音楽。家族・兄弟の絆。人間ドラマ。大自然。レトロな物や街並み。と
いつもお約束の大好物な要素が満載のここまで。お気に入り作品確定…
と思っていたのですが…
前半と後半で別物になっちゃいましたね…。
とあるターニングポイントを境に時間は流れ、かわいらしかった子供達はヒゲ面の青年に。
同時に物語の展開は駆け足で人生をなぞって行きます。
この先はアメリカ映画のようなコテコテのサクセスストーリー。
「苦悩の末、愛の力にも助けられてこんなに立派になりました」みたいな。
はぁ…。残念。
まぁこれはこれでいいんですけどね。ちゃんと成立してるので。
でも個人的なテンションは一気にげんなり。
前半部分は★5つでしたが、後半で2つ分ダウンです。
でも後半にもちょっとイイ話的な要素はちゃんと入ってるので
最後まで飽きずに観られると思います。特にお父さんの奮闘ぶり。愛です。
余談ですが、
若い頃に音楽絡みで知り合ったブラジル人たち。
ラテンの国のボサノバやJAZZのリズム感に血の違いを感じたものです。
「ブラジルじゃ音楽かサッカーでしか成功できないから…」なんて言ってた人を覚えていますが、それは極端な言い方だとしても、スラムでの生活から抜け出すということは、
日本で普通に暮らしている僕達には簡単に想像できるようなものではないのかも知れないですね。
この映画。後半はもはやドキュメンタリーですが、
ストーリーは全編を通して事実を基にしているとのこと。
時代背景やお国柄を踏まえた上で観てみると
また違って感じる所もあるのかも知れません。
※他サイトより転載(投稿日:2008/05/10)
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