パリ、ジュテームのレビュー・感想・評価
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監督名、俳優名を列挙するだけでも一苦労する短編集
1 モンマルトル Montmartre :ブリュノ・ポダリデス ★★★
監督自身が主演。血糖値が下がって倒れた女性を渋滞のため移動できない自分の車に運びいれるという展開。もしや続きがあるのでは?と期待させるところが素敵。
2 セーヌ河岸 Quais de Seine :グリンダ・チャーダ ★★★
これも出会いだけを描いた短編。悪友2人は全く無視していたアラブ系女性が気になってしょうがない主人公。短いながらも、人種偏見の全く無い主人公の恋心は純粋で爽やか。
3 マレ地区 Le Marais :ガス・ヴァン・サント ★★★
女性に大人気のギャスパー・ウリエル君がゲイ??「会ったことあるよ」などと、誘うための常套句なのか、ほんとに会ったことがあったのかはわからないけど、ショートコントよりも最後の疾走シーンが鮮やかでした。
4 チュイルリー Tuileries ジョエル&イーサン・コーエン ★★★★
地下鉄で観光ガイドを読む観光客役のスティーヴ・ブシェミ。映像や独特の編集によるブラックな展開はコーエン兄弟そのものでした。「マレ地区」に続き、言葉が通じないことの面白さもさることながら、吹き矢を放つ子どものポイントが見事。
5 16区から遠く離れて Loin du 16eme ウォルター・サレス ★★★★★
自分の子どもを託児所に預け、裕福な家庭のベビーシッターをするカタリーナ・サンディノ・モレノ。設定自体が貧富の差を風刺した驚愕の内容であるが、わが子と同じように子守唄であやす主人公の優しさを強調してあるところがいい。
6 ショワジー門 Porte de Choisy クリストファー・ドイル ★★★
いきなりチャイニーズ。原色中心の鮮やかな髪型と、中国美女によるカンフーアクション。アメリの写真とギャグが印象的・・・
7 バスティーユ Bastille イサベル・コイシェ ★★★
妻を愛してないことに気づいた男が別れ話を切り出そうとしたとき、妻が不治の病であることを告げられる。あとから考えると、味わい深い作品だったけど、「ショワジー門」の次だったのがよくなかった・・・どことなくコントであるような気がして・・・
8 ヴィクトワール広場 Place des Victoires :諏訪敦彦 ★★★★
「カウボーイは今でもいるんだよね」と言っていた亡き我が子を想うジュリエット・ビノシュ。夜になると幻想的な雰囲気に包まれる広場にウィレム・デフォーが!!もう俳優だけで満足。
9 エッフェル塔 Tour Eiffel :シルヴァン・ショメ ★★★★
『ヴェルビル・ランデブー』の監督。パントマイマーの男女が奏でるコミカルな短編だけど、18編のうち、ずっと心に残りそうな作品でした。大きなカバンを背負っている子どもが可愛いんです。
10 モンソー公園 Parc Monceau :アルフォンソ・キュアロン ★★★
ニック・ノルティの登場に驚き!5分間ワンカットで撮ったスリリングな会話展開が面白かった。
11 デ・ザンファン・ルージュ地区 Quartier des Enfants Rouges オリヴィエ・アサヤス ★★★
ストーリーは面白くないけど、マギー・ギレンホールの変化する表情がいい。
12 お祭り広場 Place des Fetes :オリヴァー・シュミッツ ★★★★★
「蚊に刺されたよ・・・」とつぶやいて蹲る黒人男性。応急処置を施す若い黒人女性。「一緒にコーヒーを飲もう」・・・わずかの時間に男性の回想録。5分という短編の枠に彼の人生が凝縮されているかのようであり、「この歌に聞き覚えない?」と静かに伝える姿に感動。最も好きな作品となりました。
13 ピガール Pigalle :リチャード・ラグナヴェネーズ ★★★
ファニー・アルダンとボブ・ホスキンス。長年舞台でコンビを組んできたという設定だけど、どこまでが本当の演技なのかわかないところがいい。
14 マドレーヌ界隈 Quartier de la Madeleine :ヴィンチェンゾ・ナタリ ★★★★
彩度を落とし、モノトーンのような映像にしたヴァンパイアものの短編。血の赤色だけ目立つようにした映像は『シン・シティ』を思い出す。その『シン・シティ』にも出演したイライジャ・ウッドが女吸血鬼に・・・といった、普通のヴァンパイアものの男女逆パターン?
15 ペール・ラシェーズ墓地 Pere-Lachaise :ウェス・クレイヴン ★★★★
結婚を間近に控えた二人(エミリー・モーティマーとルーファス・シーウェル)が墓地にやってくる。オスカー・ワイルドファンの彼女に「笑わせることが必要」などと言われた彼が、なんとオスカー・ワイルドの幽霊に遭遇・・・彼らの幸せを願っての行為だったのか、それともゲイだったからなのか・・・よくわからないけど。
16 フォブール・サ・ドニ Faubourg Saint-Denis :トム・ティクヴァ ★★★★
女優志願のナタリー・ポートマンの練習風景を聞いた盲目の男性。それほど彼女の演技が迫真にせまっていたことの証明でもあったわけで、理解者となった彼は親しくなってやがて恋人となる。オチがわかってしまうので、ストーリーはそれほどでもないけど、2人の愛の経過をスピーディに映像化したところが素敵です。もちろんナタリー・ポートマンも素敵・・・
17 カルチェラタン Quartier Latin フレデリック・オービュルタン ★★★★
もう一人の監督兼、レストランのオーナー役にジェラール・ドパルデュー。別居中の夫婦、ジーナ・ローランズとベン・ギャザラ。「離婚が成立したら・・・」等々のちょっと聞いただけでは険悪になりそうな会話なのに、「駆け落ちしようか?」とのひと言が2人の関係(再燃?)を予感させるキーポイント!それにしてもドパルデューの最後の言葉が憎いね・・・
18 14区 14th arrondissement :アレクサンダー・ペイン ★★★
フランス語を習得して、一人旅のマーゴ・マーティンデイル。口を大きく開ける表情には『トータル・リコール』のあのおばちゃんか?と勘違いしてしまう。ああ、愛を求めて一人旅をしてみたいものだ・・・
パリをのぞき見したような。
京都シネマ10周年企画の会員500円にて!いい企画だー。
五、六本のオムニバスかと思って見始めたのですが、なんと18本!一本ほぼ5分とか?でもパリとそこに住まう人々のあれこれがきらめく素敵な映画でした。幸せも悲しみも絶望も喜びも怒りも、街にはあるんですね、いつもいつでもね。そんな感想です。
お気に入りは、コーエンブラザーズのスティーブブシェミが悲しい目にあうやつと(モナリザすき過ぎるやろ!)、シルバンショメの白塗りパントマイムの彼のと(よかったね、素敵な伴侶とかわゆい子供ができて)、ジュリエットビノシュのと、ラストのアレクサンダーペインのかなぁ。イライジャウッドのセリフなし吸血鬼ものもアリかな。
アレクサンダーペインの短編の主人公が語る孤独と幸せに共感です。
いろんな人種がいて、風光明媚で、猥雑で、多分街はあまりきれいでないパリ。もう一度訪れたい!と思いました。
それぞれのパリ、それぞれの愛
パリ市内の各所を舞台に世界各国の映画監督が愛をテーマに撮影したオムニバス映画。
各ストーリー5分弱というとても限られた尺の中で物語を作るのはなかなか難しい仕事だが、その条件の中で、むしろその条件を生かしていい仕事をしているなと思うのは、シングルマザー(と思しき)の若い母親が自分の幼い子どもを預けて仕事として他所の裕福な家庭の子どもの面倒を見るという哀しい矛盾を両方の子どもに同じ子守歌を歌って聞かせる姿で伝えるウォルター・サレス&ダニエラ・トマスの「16区を遠く離れて」、慌てて待ち合わせの場所に着いた年配の男と男を待っていた若い女の関係をセリフで見せて温かいオチをつけるアルフォンソ・キュアロンの「モンソー公園」。監督の色が良く出ているなと思うのは、途方に暮れるアメリカ人観光客をスティーブ・ブシェミがスーパーキュートに演じるコーエン兄弟の「チュイルリー」、目の不自由な青年の勘違いを描くトム・ティクヴァの「フォブール・サン・ドニ」。「カルチェラタン」のジーナ・ローランズとベン・ギャザラは、もう二人が会話をしているだけですごい贅沢感と満足感。
これはそれぞれの監督の視点を楽しむべき作品であって、一本の映画として評価するのは難しいと思う。
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