TANNKA 短歌のレビュー・感想・評価
全2件を表示
川の蛇行って、何のために起こるか知ってる?
映画「TANNKA短歌」(阿木燿子監督)から。
歌人・俵万智の処女小説「トリアングル」が原作とはいえ、
ちょっとなぁ。(汗)
「監督・阿木燿子、音楽・宇崎竜童」の名前につられ、
観てしまった・・というのが本音である。
たぶん脚本の根底に、俵万智さんの刺激的な短歌があり、
それを映像化したのではないか、と思われる。
(最後に、使用されていた短歌を残すので、想像してください)
そんな作品の中、私がメモしたのは、バーでのワンシーン。
役どころも忘れてしまった、西郷輝彦さんの発した台詞。
「川の蛇行って、何のために起こるか知ってる?」
そして、答えを焦らしたあと
「そのおかげで、湿原の隅々まで水が配れる」と続く。
それを受けてバーのママ役、高島礼子さんが呟いた。
「自然は蛇行する知恵を持っているってことね」
これだけでも、知ってよかったなぁ。(笑)
■幾千の 種子の限りを 覚まされて 発芽してゆく 我の肉体
■唐突に 恋は始まるものだから さあ、もう一度 いえ、もう二度と
■渡されし 青銅色の ルームキー ずっしりと手に 重たき秘密
■朝刊のように あなたは現れて はじまりと言う 言葉かがやく
■水蜜桃の汁 吸うごとく 愛されて 前世も我は 女と思う
■ふと宿り やがて心の 染みとなる ユリの花粉のような ジェラシー
■うしろから 抱きしめられて 目をつぶる 君は荷物か 翼か知らぬ
■缶ビールなんかじゃ 酔えない夜のなか 一人は寂しい 二人は苦しい
■家計簿を きちんと付けて いるような 人を不幸に してはいけない
■八枚の 花びらを持つ コスモスの いつでも「きらい」で 終わる占い
■きつくきつく 我の鋳型を とるように 君は最後の 抱擁をする
■散るという 飛翔のかたち 花びらは ふと微笑んだ 枝を離れる
官能映画としても短歌のテキストとしても微妙な完成度
私は学生時代から趣味で、下手の横好きながらも短歌を描き続けている。
公開当時やから、もう6年も前か…
短歌を扱った作風やと云う以外、内容を一切知らぬまま、短歌の腕を磨く勉強にと、在りし日の静岡有楽座に出陣。
冒頭でいきなりヒロインの黒谷友香が喘ぎ声を乱舞する濡れ場を目の当たりにし、座席からひっくり返った思い出がある。
当時、短歌のテキストどころじゃなかったけど、官能映画としても微妙な完成度やなぁと思った。
先日、久しぶりにDVDで鑑賞したが、妙に時代が古臭く感じて不思議だった。
敏腕フリーライター・黒谷友香が仕事と恋愛に悩む日々を赤裸々に短歌で綴っていくラブロマンスだが、ストーリー展開は単調。
原作が恋愛短歌のパイオニア・俵万智で、
監督が名作詞家の阿木燿子という2大女流歌人がこしらえているので、台詞一つ一つが丁寧で美しく聴き取れる反面、文学的過ぎて歯の浮くような会話のやり取りに陥り、恋愛観にどうしても冷めてしまう。
恋人役が村上弘明で、一語一句がキザで、尚更、歯が浮き、虫歯が疼いた。
一方、年下の彼氏役の黄川田将也の演技はなかなかのダイコンやから、虫歯菌さえ死滅し、頭が痛くなる始末。
彼女を抱いた後、いきなり「光合成〜〜!」と叫ぶ場面は呆れ返って、背後からぶっこ抜きバックドロップを仕掛けたくなった。
女子の同窓会でカラオケハウスに年下の彼氏を呼び出し、これ見よがしに友達に自慢する黒谷友香の小悪魔ぶりが唯一の見所。
女って血も涙もないなぁ〜
そして、男っていつまでもアホな生きもんやなぁ〜としみじみ感じる作品である。
今作で短歌に興味を持ったってぇ人はおるんかな?
つくづく疑問である。
では、最後に短歌を一首
『都合良く 踊る花弁の 蜜を詠む 光合成は 砕ける前に』
by全竜
全2件を表示