「言葉足らずのドラマの切れ端が残す余韻が心地良い、微笑ましくも切ない作品」楽日 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉足らずのドラマの切れ端が残す余韻が心地良い、微笑ましくも切ない作品
第35回東京国際映画祭での観賞。
台北の古い映画館、福和大戯院。閉館前の最後の上映作品は60年代の武俠片の傑作『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』。スクリーンを静かに見つめる老人と子供、客席や廊下をウロウロする怪しげな男女、映写係の男、そして受付兼雑用係の女。セリフらしきものはほとんどなく映画の断片の合間に放り込まれるどことなくギクシャクしたドラマの切れ端が観客の想像を静かに刺激します。いわゆるハッテンバにおけるトラブルの数々に笑わされ、微かに漂う恋の香りが雨に溶けていくかのような終幕が美しいです。短いセリフで匂わされる観客席にいた二人の正体にもビックリです。
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