ライオン・キング3 ハクナ・マタタのレビュー・感想・評価

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5.0何か、得した気分♪

2025年11月26日
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鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

斬新

『ライオン・キング』の物語をティモンとプンバァの視点から描くというのは、とても斬新で面白いアイデアだと思いました。
壮大な物語の裏側で起こっていたエピソードを知れたことで、よりキャラクター達に愛着が湧きましたし、重厚な印象が強い作品のイメージも、少し身近で柔らかいものに変わった感じがします☆
エンディングも、ディズニーファンからするとカナリ嬉しい演出があったりで、見ていて何だか得した気持ちになりました↑↑↑

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RYOKO

3.0「ハクナ・マタタ」は大航海時代の合言葉

2025年11月25日
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興奮

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ライオンキング3は第1作のスピンオフとして、ティモンとプンバァという“社会の周縁に置かれた存在”の視点から、第1作と同じ時系列を辿る構造になっている。王権と血統を中心に据えた第1作と並べると、まるで同じ世界の“下層から見た歴史”が語られているように映る。

(下記の本レビューをご覧いただく前に、ぜひ当方の『ライオンキング1および2』に関するレビューをご覧いただきたい。本作が描く世界観や社会制度は、過去作が暗喩していた社会構造と密接に対応しており、その前提を共有したほうが、本作に込められた多層的な意味がより明瞭になるためである。)

まず、ライオンキング1/2はアフリカではなく、中世~近世ヨーロッパの寓話であることは、過去作レビューで指摘したとおりである。
ここで、ティモンの属するミーアキャット社会は弱肉強食の底辺に置かれ、その閉塞感は中世ヨーロッパの農奴制度を思わせる。農奴は領主の土地に縛られ、移動の自由を持たず、労働や貢納の義務を負っていた。ティモンが“つまはじき者”として共同体を追われる場面は、社会の混乱によって生まれた追放者や、家督を継げず行き場のなくなった次男坊たちが、新たな居場所を求めて新天地へ向かった探検史と重ねることができる。シンバの追放が罪と責任から逃げる物語だったのに対し、ティモンの旅立ちは社会的逸脱者が生きる場所を探す色合いが強い。

彼らが向かう新天地は、大航海時代の探検そのものだ。壊血病、嵐、海賊の脅威が常にあり、地の果てから落ちると信じられた地球平面説の恐怖すらあった。船乗りは慢性的に不足し、囚人や社会のはぐれ者、家督を継げない次男坊が乗り込むことも多かった。そんな環境では、「ハクナ・マタタ(なるようになるさ)」という心構えは、生き延びるための精神技法でもある。

劇中でティモンとプンバァが滝に流されながら地球平面説と球体説を議論する場面は、まさに大航海時代の世界観をギャグとして提示した露骨な暗喩だ。

ここでプンバァの造形を見直すと、妙に示唆的になる。ドジで愛嬌のあるイボイノシシでありながら、球体説や天文学(これは第1作で描かれている)を理解し、いざとなればどんな敵も追い返す弁慶級の用心棒。そのうえでティモンを導く案内役を担っている。これらの要素を束ねて読むと、プンバァはヴァイキング、とりわけ北欧の航海文化の末裔を暗喩している可能性が出てくる。ヴァイキングは中世にすでに高度な航海術を持ち、世界の果てを理解した人々である。(ヴァイキングがコロンブス以前にアメリカ大陸を発見していたという学説もある※引用1)また、プンバァの武器でもある“強烈なにおい”という特徴は、北欧の保存食シュールストレミングを思わせるメタ要素として解釈することもできる。したがって、プンバァもまた、ヨーロッパ社会から見て周縁の存在として位置付けられるキャラクターである。

こうして見ると、ライオンキング3はただのギャグスピンオフではない。王家を中心に据えた歴史叙事詩(第1作)と、社会の縁に追いやられた者たちの大航海物語(第3作)を対置し、同じ世界を別階層から描く多層世界の物語が立ち上がる。そして、ティモンとプンバァが到達した新天地が開拓されていく描写は、第2作における中世から近世への世界観の転換とも矛盾なく対応する。

最後に、物語の終盤でミッキーをはじめとするディズニーファミリーが影として現れる点も象徴的だ。これは新天地、アメリカ、そしてウォルト・ディズニー自身が体現したアメリカンドリームの出発点と発展を重ね合わせるメタファーとして機能しており、視聴者に新世界の始まりをそっと想起させる仕掛けとなっている。

※引用1 Vikings in North America? Here’s what we really know” – National Geographic(2023)

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しろふくさん