燃える戦場のレビュー・感想・評価
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健さんとアルドリッチ
1970年公開。アルドリッチ監督の戦争活劇。第2次世界大戦が舞台。
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ある部隊が、遂行不可能な無茶な指令を受け、果たして生きて戻れるのか、どうなのかというストーリー。
アルドリッチ『特攻大作戦』と同じくコメディっぽいところもあるが、しょせん兵士は使い捨てで死ぬしかないんだという、冷え冷えとした所もある。
主人公は、前線に立った事のない厭戦の中尉、戦争もどこか他人事。
彼は、公開当時のベトナム反戦運動の反映なんだろうと思う。安全な場に居てこその厭戦で、前線に送りこまれたらそんな事も言ってられないという非情さ。そのことに中尉が気付いた時には、もう手遅れなんだけれども。
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この映画で、ひときわ印象深いのが、敵の日本兵演じる高倉健。
追いつめられたイギリス兵に、投降を呼びかける少佐役。
健さんが、捕虜を殺す振りをしたあとで、助けるシーンがイイ。
助かったことに心底驚く捕虜。
オレがそんな酷い事すると思ってたのかよと、見損なうなよと、少し寂しそうな健さんの表情がイイ。健さんだからこそ、嘘っぽくない。
健さんは、理知的な役で、人間らしいルールと言葉によって解決しようとする。
最終的にはそれが仇となって殺されてしまう。
戦場という狂った場においては、理知よりも暴力の方が有効で当たり前なのだ。
健さんをカッコ良く描きつつ、その無常さを浮かび上がらせている。
残酷なのは敵味方同じだよ。その一方で、敵にだって人間らしい所はあるんだよ。そういう相手と殺し合うのが戦争なんだよというアルドリッチ流の反戦映画。
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追記:原題は「Too Late the Hero」。
映画のラストで「英雄」というセリフが逆説的に使われている。
同年公開の戦争映画『戦略大作戦Kelly's Heroes』も、「英雄」を逆説的に使っている。当時のベトナム反戦の影響なんだろうと思う。
最近の戦争映画では、『フューリー』がその部分を真似ている。
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