劇場公開日 1957年6月19日

「ヒッチコック感がマイナスに思えて…」間違えられた男 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0ヒッチコック感がマイナスに思えて…

2021年7月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

私としては買えない作品だ。
結局は、夫は冤罪で容疑者になり、
その夫に疑いを持ったために精神の破綻に
陥った妻、その夫婦二人の話なのだが、
そこに中途半端にヒッチコック感を出し、
さも何かがありそう的な描き方をしたこと
には流石に無理を感じた。

実話に基づくと言うのなら、
警察の似た男の捜索や、
筆跡が何故似ていたのか、との点について
全く触れていないのは、
主人公が逮捕されても声高々に
無罪を主張しないことも含め、
私はただ情報の外に置かれているように
感じさせられ、現実感も得られなかった。

ヘンリー・フォンダという、
アメリカの良心を体現するような俳優の起用
から、私は逆に、あるいはこの主人公が
実は犯人だったとの観客への罠なのかな
とも思い観ていたが、
さすがに中盤から妻の疑う描写が
出てきて思い直したものの、主人公の言動が
余りにも淡々とし過ぎていて、
ヒッチコックが実際にあった冤罪事件の
事実以上に何を表現しようとしているのか
分からなくなった。

監督がいつもと違う切り口で
社会問題へ迫ろうとする意欲は買うが、
思わせぶりなヒッチコック要素の行使が
邪魔をしていたように感じる。

内容からして、
夫婦の思索により深くウエイトを置いて、
別の監督で正攻法的に撮った方が良かった
のではと思わせるテーマ作品だった。

KENZO一級建築士事務所