劇場公開日 1996年11月9日

「最低にに気色の悪い最高の名作」ファーゴ ひびのさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5最低にに気色の悪い最高の名作

2016年11月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

これは実話の映画化である。完全に大嘘です。
前々からみたいと思っていたコーエン兄弟の名作。
コーエン兄弟らしいシュールでブラックな笑いが全編に散りばめられたサスペンス映画です。

多額の借金の返済のために狂言誘拐を計画し、義父が支払う予定の身代金をせしめようと考えた冴えない中年のおっさんでしたが、
肝心の実行犯が、とんでもない間抜けのドチンピラ二人組。
軽率で、衝動的で、無頓着で、無計画で無鉄砲な振る舞いが悪い方向へと転がり続け死体は増えるわ、大事になるわ。
ただ情けないおっさん達の痛々しい様を終始観察するそういうなんともいえん・・・作品になっています。

言ってみれば、仰天ニュースや世界丸見えでピックアップされるような、実際に起こったけどどこか浮世離れした不可思議なお話・・・っていう設定に基づいた疑似再現ドラマといったところでしょうか。

ただ、面白いのは。
仰天ニュースにしろ世界丸見えにしろ、ドラマとして成立させるために、緊迫感のある演出だったり、不必要な部分をカットしたり、
見世物として事件を加工して放送するのが普通だと思います。

ファーゴは全編垂れ流し。
二人組のいかれた男を追跡する身重の女性保安官は、捜査の傍ら旦那の釣りのための餌ミミズを買いに雑貨店に走るわ、はたまた旦那に内緒で昔の男に会いに行くわ、脱線しまくり。
妊婦で食欲旺盛なもんで、常にバーガーぱくつきながらの仕事です。
この脱力感というか(もちろん敢えての演出だと思いますが)、全体の緊張感のなさが他のどんな作品でも表現できない唯一無二のフシギーな世界観を作り出してるんでしょうね。

正直余韻もなんもありゃしないです。なんともいえない気分になるが、
僕はむちゃくそおもしろかったです笑

携帯電話がほとんど普及していない作品なので、若い人は違和感を覚えるかも。

ひびの