「永遠と退屈」パーマネント・バケーション 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
永遠と退屈
何かが降りてきそうで降りてこない歯痒さが70分間ひたすら持続する映画だった。緩み切ったニューヨークの時間は狂人たちの奇想さえ無害な独り言に変えてしまう。そしてそれらはどこにも辿り着かない。意味を成さない。独り言は独り言のまま摩天楼に飲み込まれ消えていく。永遠と退屈は似ている。画面のあまりの変わり映えのなさは確かに往年のアメリカ映画とは一線を画しているといえるが、その奇特さだけで70分という時間をやり過ごせていたようには思えない。序盤のダンスシーンなどは画として鮮烈だったものの、それ以降はあまり面白いと感じられなかった。ラストシーンでの主人公と異邦人とのやりとりから、本作がニューヨークから渡仏した先で映画に目覚めたジム・ジャームッシュの個人史と連動していることは明白だが、そうした文脈を度外視した場合、そこまで映画としての強度はないんじゃないかなというのが正直なところだ。
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