「女たらしの軍将校兵と公爵夫人の救われないラスト」夏の嵐 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
女たらしの軍将校兵と公爵夫人の救われないラスト
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恋焦がれた将校に騙されていたことを知った公爵夫人が軍に偽装除隊を通報して、男が銃殺される展開が衝撃的で、愛憎が表裏一体であることを突きつけられて怖い。
オーストリア軍中尉ファーリー・グレンジャーが、公爵夫人を虜にして大金をゲットするプロセスの演技と描写が巧み。観客からは騙してるのが良く見える様に、かつ夫人が騙されるのに説得力ある様に演じている。除隊後売春婦と酒の耽溺した暮らしの中、いきなり彼女に訪問されて、公爵夫人に階級差に復讐するかの様に悪態をつくところも、なかなかに良い。
また、イタリア・オーストリア戦争の時代、19世紀後半の貴族の特権的な暮らしや扱いにはビックリ。公爵夫人というだけで、戦地の通行も自由で、敵軍からも丁重なもてなしを受けるのだ。そして、冷たく美しい街の石畳とそこを引き摺るかたちで歩く公爵夫人のスカート
。汚れてしまわない?逆に、何とも贅沢なこと。
全体的には、ルキノビスコンティが何を描きたかったが今ひとつ掴めず、落ち着きが悪い。人間の、特に貴族の堕ちていく様に甘美な魅力を感じてる?それとも、歴史的必然として貴族階級の破滅していく伯爵夫人の姿に、自分を重ねてみている?それとも、庶民階級の若いハンサムボーイとの愛欲に溺れて破滅する貴族夫人に自分を重ねている?正直、良く分からなかった。
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