毒薬と老嬢のレビュー・感想・評価
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キャプラ先生の異色作
元はブロードウェイですが、先生としては異色作と言っていいでしょう。
いつもの理想主義的メッセージはなく、ブラックのドタバタコメディの様相です。
ストーリーだけでいえば、殺人や死体隠匿、狂人の一族というかなりヤバイ題材を極端な人物造形によって一級のドタバタに仕上げる腕は名人芸です。
しかし、このあとみんなどうなるんだろうか?
驚異のナンセンスギャグ映画
フランク・キャプラ監督作品の中でも特に
大好きな「素晴らしき哉、人生!」
の前作として初観賞。
しかし、ヒューマンドラマの「素晴らしき…」
と異なり、
驚異のナンセンスギャグ映画だった。
慈善事業と称して毒酒殺人を続ける二人の
老姉妹、それだけでかなりぶっ飛んだ設定
だが、そこにハチャメチャなメンバーが
集まってのドタバタ劇という、
もう常識を遙かに凌駕した展開で驚いたが、
解説で舞台劇の映像化作品と知って納得。
舞台の映像化作品として、
ブロードウェイの映画化作品や、
深作欣二の「蒲田行進曲」、
黒木和雄の「父と暮せば」などを思い浮かべる
が、成功した映像化作品は
多くは無いように思う。
多くを製作した三谷幸喜も舞台以上の作品を
残せなかった。
隠喩とディフォルメの世界の舞台の映像化
成功のためには、
リアリティは、と感じている暇を与えない
位の高度な演出手法の駆使か、
舞台の枠を大きく飛び出す映像手法が必要
かと思うが、
後者の典型が「蒲田行進曲」であり、
この作品は前者の代表作と思えた。
正にキャプラ監督の才能が
遺憾なく発揮された作品ではないだろうか。
幸いにも私は、この類い希なる才能の持ち主
がこの作品の2年後に監督した、
ヒューマンドラマとしての傑作
「素晴らしき哉、人生!」
を観れていたことになる。
ハロウィンのブルースター家
ハロウィンは古代ケルトが起源らしい祭りで
この時期、悪いもの(精霊とか)も行き来するので
これらが家に侵入しないよう かがり火をたき、暖炉の火を新しくした
独身主義のモーティマー(グラント)は結婚を決めたが、問題が次々と起こりハネムーンが暗礁に乗り上げそうに…
脱獄した兄(殺人鬼)も戻って来る
叔母姉妹は料理上手だが 毒酒で殺人をし、慈善事業をしたかのように喜んでいる
(すでに家内に存在する魔女のよう)
魔女 vs 殺人鬼
そこに セオドア “テディ” ルーズベルト化したテディが微妙に絡む
家に実験室や薬物があり、姉妹の死体慣れからも
ブルックリンの(アメリカの)名家の胡散臭さを皮肉っている
ケーリー・グラントが様々な驚きの表情を見せ、ドタバタを牽引する
ピーター・ローレ(アインスタイン博士)の軟体動物のような不思議な存在感
ジョセフィン・ハル(アビー叔母さん)の狂気も感じられる可愛さ
ジョン・アレクサンダー(テディ)のぶっ飛び感
ジャック・カーソン(オハラ巡査)の二度見、逸脱してゆくアイルランド系
などが印象に残った
(達者な人々が出演しているので 好みも色々、分かれそう)
大ヒット舞台劇を キャプラ監督が違和感なく映画化している
キャプラのブラックユーモアを召し上がれ
フランク・キャプラとしては珍しいブラックユーモアたっぷりの、舞台劇の映画化。全編弛むことなく快調に進むキャプラの演出力が見事。主演のケーリー・グラントの洒脱で知的な二枚目役も嵌り、その他の人物の役割、流れも申し分ない出来。途中から現れる、異様な雰囲気でユーモアを醸し出すレイモンド・マッセイとピーター・ローレのキャラクター表現の巧さ。戦時中の制作でブラックユーモアのコメディの傑作、何というブラック・ユーモア。
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