ボルベール 帰郷のレビュー・感想・評価
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女性は美しく、強し…
父も夫も変態で、死んで然るべし。母と娘の喧嘩しながらも、強く支え合う関係性をうまく描いている。幽霊ではなかったのか。ペネロペ・クルスの圧倒的な美貌が全編にわたって、映画の色彩と相まって際立つ。
男ダメだな
公開当時に劇場で2回も鑑賞した大好きな作品を十数年振りに再鑑賞しました。アルモドバルが母と娘の作品を本格的に撮りだしたのは、「ハイヒール」。女性映画というジャンルを決定付けた「オール・アバウト・マイ・マザー」。そして恐らく映画マニア以外の人にも一番鑑賞されたのがこの「ボルベール」だと思います。私が思う「母と娘」の3部作だとこの3本ではないかなあと。
アルモドバル作品では、娘に手を出す様なクズ男は容赦なく殺されます。そして、女を守る為に女が女を庇い女が女を手伝います。そもそも結婚制度もマチズモもなかった遠い原始時代は、子育てや食事など女性同士で助けあって生活してたんじゃないかと人間の起源を想像してしまいました。だって、原始時代なら父親が誰とか全然関係ないですもの。ノラ猫みたいなもんですよね。
今作に出てくる女性達の生命力の強さと感受性の豊かさを見せつけられると、生物的に男はオマケの性なのかなあ。アルモドバルの作品を見ると理屈抜きで女性である誇りを感じてしまいます。ああ、女に生まれて本当に良かった。日本に住んでるとなくなっちゃうだよなあ「女性の誇り」。アルモドバルの作品を鑑賞して女性の誇りを取り戻しています。
母性=愛すること・守ること・許すこと、そして弔うこと
ペネロペ・クルス演じるヒロイン、ライムンダは、典型的なラ・マンチャの女だ。気性は荒いが、情に篤く、たくましく優しい。今回の彼女の強烈な母性はどうだ!それは大きな胸とお尻が象徴している母性そのもの。
女は強い。重い冷蔵庫も運べば、死体も運ぶ。死体を処理した後で料理をしたりもする。ここで現れる女たちの連帯感がすごい。彼女に手を貸すのは全て女たちだ。この行動力を伴うバイタリティー。それは愛する者を守りたいという想いと、食べていかなければならないという女ならではの現実性に基づいている。
さて、物語は殺人や死んだはずの母の目撃情報など、サスペンスの要素を含みながらも、陰惨にならずにコミカルかつハートフルに展開していく。それをさらに盛り上げるのが、凝ったカメラワークと配色の美しさだ。スペインの家はカラフルでカワイイ!キレイなタイルの壁をはじめとするポップな色のインテリアやファブリック。何よりも「血」を意識させる「赤」の使い方が見事だ。
女たちは、強さだけを見せているのではない。母であるライムンダも、彼女の母に対しては1人の娘。過去の傷のために、解り合えなかった母娘は、同じ傷を受けて、わかりあい許しあう。
「死」という人間には一番受け入れがたい恐怖に対抗できるのは強い母性…。死者に対しては、全てを許し厚く弔い、これから死に臨む者に対しては、その最期を看取る勇気と責任感を発揮する。
アルモドバル監督は、母性=愛すること・守ること・許すこと、そして死者を受け入れ弔うことを、ラ・マンチャの強くてかわいらしい女達を通じて私たちに物語る。重要なテーマである母性と死…帰郷とは、死を受け入れ甦り、再び母の腕に抱かれるまでの魂の再生。
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